少し離れた場所にあるベンチに座って傍観する。はしゃぎ回る今剣はシロちゃんたちのグループに混ざっていく。噴出花火をしたり加州くんたちとロケット花火で和泉守を驚かせたりと楽しそうだ。

クロちゃんは…言うまでもなく薬研くんと花火しながら話してるね。お邪魔はいけない。

翡翠たちは初っ端から線香花火をやっている。雰囲気はまるで葬式。ほんとお前ら何しに来た?

皆の観察をする俺の斜め後ろでは、長谷部が静かに俺を見つめていた。



「何か言いたげだね」


「!…いえ」


「大丈夫だよ。花火に夢中で誰も聞いてない」


「…………」



皆から離れたのは少し一人になりたかったからでもあるが、長谷部と話す為でもある。長谷部は主命に忠実で報連相を怠らない奴だ。何かあれば俺が聞くまでもなく自分から言ってくる。

今回俺が先に切り出したのはただの気紛れ。しかし、今聞いておいた方が良い気がしたのも確かだ。審神者の勘…とでも言うのか、あまり良い気がしない勘が働いた。

長谷部は話して良いものかと渋っている様子だったが、一度周囲を確認すると俺の隣に腰を下ろした。



「山姥切から聞きました。そろそろ何か起きそうだと」


「ああ、あれか」



水着を買いに行く前だったか。クロちゃんの本丸に行った時のことだ。去年の異変のこともそうだが、何故だかあの日も昔のことをふと思い出していた。



「何かイヤ〜な予感がするんだよね。右が疼く」


「っ!痛みは…」


「無いよ、薬研の薬塗ってるし。でも…」



右の前髪の下…、指先で古傷をそっとなぞる。



「今思い出してもゾッとするなぁ」



狂気に満ちた瞳。

吊り上がる口角。

転がった死体の表情。

全部昨日の事のように思い出せる。



「っ、何があったのです?」


「…いいや、今はやめておこう」



こんなとこで話すような内容じゃない。
皆が楽しんでる場所で、俺だけが感傷に浸って馬鹿みたいだ。気にしてくれてる長谷部には悪いけどね。

でも、これだけは言える。



「あの時クニたちがいなければ俺は死んでいた」


「…………」


「俺が審神者やってんのはクニたちが助けてくれたからそのお礼ってのもあるし、仕事探すのに手っ取り早かっただけ。審神者業務も嫌いなわけじゃないし、続けてたら刀剣が増えて長谷部たち皆と生活すんのが楽しくなった。だから続ける。それが一つ目の理由」


「…"一つ目"?」


「そ。一つ目」



俺は今の生活を守りたい。やっと楽しくなってきた俺の人生を。

そして…



「ちょっとさ、人を捜してんだ」


「人…ですか?」


「うん。それが"これから起こりそうなこと"かな。向こうも俺を捜してんだろうし、そろそろお互いに…」



見つけられそうなんだよねぇ。

ザワザワと生温い潮風が吹き抜けていく。こういう予感は好まないんだけど、嫌だとか面倒だとか言っていられない。

なぁ、そうだろう?



「主?」


「なんでもないよ。ま、近い内にお前たちにも話すさ。なるべく面倒事には巻き込みたくないんだけどね…」


「俺たちは主の刀。主の思うままに何なりと命じてください。地の果てまでもお供しますよ」



頼もしいくらいに言い切る長谷部。いつもいつも、こいつらは俺が思う以上の言動で楽しませてくれる。

今度は心臓が疼いた。



「俺、地獄行きかもよ?」


「地獄の果てまでもお供しますよ」


「あっはは!言い直した!良いよ長谷部、死んだら全員で地獄巡りだ!」



うん、やっぱりこいつらといるの楽しい。
しんみりした空気なんて微塵も出したくないし、笑って生きて、笑って死にたい。

だからさ…



「さっさとツラ出しに来いよ、"カナデ"」



待ち望んでいたその時は、足音も立てず目前にまで迫ろうとしていた。










「瑪瑙、そろそろ帰るわよ!」

「はーい」

「たのしかったですね、あるじさま!」

「だね。イベントはまた来年か」

「次はどこが良いでしょう?」

「今年が海ですから、山とかどうです?」

「良いねぇ」

「また皆で遊びたいね!クロ!」

「うん。また皆で」

(一人も欠けずに、皆で…)










「…………見つけた……ユウ……」


 

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