さて、どこから入ろうか。建物に近づきながら考える。
廃れていてそこかしこに穴が開いているから入り口はたくさんあるのだけれど、ここは刀剣を警戒して窓から入るか。それとも真正面にある玄関から堂々と入るか。



『(…玄関にしよ)』



これから生活する場所なのだから泥棒染みた真似はしない方が良いだろう。万が一それで逆に刀剣の警戒を煽ってしまえばただでは済まなそうだ。

ということで扉の前に立ち、一応中の気配を確認する。



『(近くには……誰もいない。けど気配がたくさん集まってる場所がある)』



単独で行動している刀剣はいないらしい。誰と出会そうとも一対一でのやりとりにはならなそうだ。
向こうは刀でこっちは丸腰。果たして上手いこと話が出来るのだろうか。


まぁ、まずは入らなければ始まらない。扉に手をかけて横にスライドさせると、さすがに建て付けが悪いかと思えばすんなりと開いた。

中の様子はというと、まぁ酷い。赤黒い血がそこかしこにこびりつき、棚は崩れ、物が散乱して争った跡がそのまま残されている。空気は淀んでいてハッキリ言って臭い。
これは一人で掃除するには骨が折れそうだ。

ふぅ、と溜め息を吐いて敷居を跨ぐ。靴は履いたまま行くとしよう。あまりにも物がありすぎる上に砂埃も酷いから裸足では歩きたくない。


気配の塊は奥の部屋に一つ。

こっちに近づいてこないということは気づいていないのか、警戒して寄って来ないのか。それはわからないけれど、とりあえずその部屋を目指しながら探索してみようかと廊下を進んだ。


 

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