シ『で?用が無いならさっさと出てって』


真「…本当に君たち双子って似てるような似てないような」


シ『出・て・け』


真「わあああ待って待って!!言う!!
用件言うから花瓶構えないで!!!」



いつまで経っても本題に入らない真黒に、枕元にあった花瓶(花とお水たっぷり)を野球選手のように構えてみたら流石に焦ったらしい。

花が可哀想?
残念ながら私に花を愛でる心なんて無いんだよ。
あ、クロがくれるお花は別だけどね!この花はさっきこいつが生けたやつだからいいの!

因みにこの部屋にはテレビが無く、野球選手は雑誌でしか見たことが無い。お分かりだろうが運動したことも無いからコントロールもメチャクチャだと思う。

せっかくちょうど良い練習台が目の前にいるのに…



シ『…チッ』


真「こらこら舌打ちしないの」


シ『兄貴面すんな』


真「いや。私、一応君のお兄ちゃんの立場に」


シ『世間的に″義・理・の″兄であって私は認めてねぇ』


真「…………ぐすん。
(クローーーッ!!妹の口悪すぎるよッ!!!)」


シ『で?』


真「あ、うん。君のお姉さんについての報告に」


シ『クロ!!クロ元気でやってるんだよね!!?』


真「お、落ち着いて落ち着いてっ」



クロの話題なら話を聞かないわけがない!!
食い入るように前のめりになるとどうどうと宥められた。私は動物じゃない!!

クロが送られた本丸については、彼女が就任した後にこいつに教えてもらった。前日にも就任したって話はクロから直接聞いていたけど、黒本丸という普通じゃない本丸に行ったって聞かされてこいつを怒鳴りつけたのは記憶に新しい。

なんでクロがそんな危険なとこに放り込まれなきゃいけないのよ!
私の身体が元気ならズッタズタのボッコボコにして首をもぎ取ってホームランを打っているところだ。



真「(…!!な、なんか悪寒が…)
えっと…。黒本丸の修復は成功したって聞いてるんだよね?お守りのこともあったし」


シ『うん。昨日連絡あった』



久しぶりに元気そうな顔を見れて嬉しくて、「お守りの巾着作って」って言われたんだ。クロに頼み事をされるのも滅多に無いから、張り切って作ったのは楽しかった。

本当は金色の生地で作るものらしいけど、ここは私の渾名とクロの好きな色、私がずっとクロの傍にいるって感じてほしくて白にした。
…というのはただの言い訳で、本当はクロの隣に行きたい私の願望から白を押し付けたようなものなのだ。言うなれば私の分身?

その日中に送って夜も連絡くれたのに、検査に邪魔されて渋々通信を切る羽目になるなんて…。早くこの生活から抜け出したいものだ。



真「クロには今日から本格的に審神者としての業務に励んでもらってる。詳しい内容は知ってる?」


シ『出陣して歴史の改変を防ぐのと、遠征と、時々演練して毎日報告書を提出。本丸内では食事とか洗濯とか日常的なことと、馬のお世話とか畑仕事とかもするんでしょ?』


真「随分勉強したんだね。その通り、簡単に言うとそれらを刀剣男士に命じるリーダーが審神者…クロの役目だ。まぁ、クロは命令したくなさそうな感じだけど」


シ『…今まで命令される側だったんだもん。しょうがないよ』


真「…………」



母さんが死んで、狂った父さんに痛め付けられて。父さんが死んだら親戚に奴隷のように扱き使われて。政府に行っても物みたいに扱われたんじゃ、命令される者の気持ちは嫌というほど味わってきただろう。
しかもそれが嫌な命令だったのなら、これから自分が上に立って命令を下すとなると、今までの鬱憤を晴らそうとでも思わない限り快感を覚えるものではない。

生憎クロはそんな歪んだ性格じゃないから、どうしても心に蟠りが出来てしまうのだろう。



シ『でも、する時はするんでしょ?』


真「みたいだよ。主として認めてくれたから有り難く使わせてもらうって」



有り難く使う…。クロらしい言葉だ。
でも、刀剣男士を使いつつ自分でも仕事してるんだろうな。自分で出来ることはやる子だし、基本的に人に仕事を任せるのって嫌いみたいだし。


 

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