最後に移動した江雪たちの背中を見送り、その場には私と瑠璃たちだけになる。
かと思いきや…、移動しなかった者が三名いた。
『行かないのですか?』
三「逃がそうと思ってもそうはいかんぞ、孫よ」
『まぁ怖いですね、おじいちゃんたら』
三「ははは。可愛い孫を想えばこそ、じじいも真剣になるものよ」
あらま、寧ろ私を逃がさないという眼光で微笑んでいらっしゃる。怖い怖い。
残ったのはおじいちゃんこと三日月と、鶴丸と薬研。私の初期刀とも言える三人だった。
彼らは石切丸と共に松風を挟み撃ちにしようと奮闘する瑠璃を観察しつつも、意識は常に私に集中させている。
逃げ場がありませんね。逃げるつもりもありませんが。
三「一斉手入れ後に言っておった″義姉″があの娘か」
『はい』
鶴「へぇ。でも主、あの子のこと″あね″として見てないよな?」
『ぎくり』
薬「ぶはっ!」
鶴「″ぎくり″って口で言うなよ!」
三「あっはははは」
ケラケラと笑う薬研につられて三日月と鶴丸も笑い出す。彼らは笑顔が似合いますね。
『よくわかりましたね?』
鶴「ははっ!まぁ、主がいつも″義姉″って言ってるからなぁ。義理でも″ねぇちゃん″とか言ってたらまだわからなかったと思うが」
成る程。確かに毎度″義姉″って言ってたらそりゃ余所余所しい関係にも思えてしまうか。ついうっかり。
三「仲が悪いわけではないのだろう?」
薬「寧ろ異様に懐かれてるよな」
『否定はしません。もっと幼い頃に義姉妹になっていれば″ねぇさん″とでも呼んでいたのでしょうけれど』
鶴「なんだ?そう呼びたくないのか?」
『今更義姉が出来て呼びづらいのもありますが…。
″あね″と呼んだら……』
「「「?」」」
瑠「はぁっ、はぁっ、終わったぁ!」
『お疲れ様、瑠璃』
瑠「もぉ〜、馬を追うなんて懲り懲りよ…」
石「元はと言えば君が厩に突っ込むからだろう?」
瑠「わかってますぅ!!……て、クロ?アンタんとこの刀剣男士どしたの?」
「「「…………」」」
瑠「三人揃ってなんかキラキラした目ぇしてない?」
『気のせい気のせい』
薬「″あね″と呼んだら″親友″と呼べなくなる…。大将らしい考え方だ。旦那たちも心配は杞憂で済んだだろう?」
三「そうだな。親しい″友″として認めておるからこそ、″あね″としては認めたくないという主の抵抗だったというわけか。可愛らしいものよ」
鶴「主が認めたくないとは余程の理由があるのかと思えば…。羨ましいねぇ、そんな想われ方すんのも。言葉ってのは面白いもんだ」