今日は演練の日。
第一部隊の薬研、五虎、大和守、光忠、一期、小狐丸を連れて政府までやってきたところだ。

演練では刀装も傷もすぐに癒える。午前と午後で編成を変えても良いらしいのだけど、私を本丸と行ったり来たりさせたくないからという彼らの要望もあって同じメンバーでいくことにした。



『それくらい手間ではないのですが…』


燭「良いから良いから。演練だから僕らは政府の力で癒えるけど、主の疲労はそのままなんだからさ」


薬「そうだぜ大将。その隈、薄ーく化粧してたって誤魔化せてねぇんだからな?」



…何故わかったんですか、エスパーですか、そうなんですか。二人してその黒い笑顔やめてください。

夢見はずっと悪く、それどころか目が覚めても尚鮮明に覚えている。更にはここ数日間寝坊して朝稽古も出来ていない。悪夢は私を弱体化させるのが狙いなのでしょうか?不愉快です。


そうして話している内に私たちが受付に到着すると、こんのすけが尻尾を振りながら出迎えてくれた。そういえば、こんのすけと外で会うのは初めてだ。



こ「クロ様、おはようございます!」


『おはよう。もう他の審神者さんも揃ってるの?』


こ「いいえ、まだ数名到着しておりません。ですが既にお待ちの審神者様もおりますので、そちらの方々とは演練可能ですよ」


『そう。ならその人たちと対戦願いましょうか』



こうしてただ突っ立っている時間が勿体無いですし。

そう伝えるとこんのすけは手続きをしに行くと言って一度姿を消した。相手方に伝えたり時間予約を入れたりとやることがあるのだろう。

こんのすけも大変だね。今度またおいなりさん作ってあげよう。



「あら〜?あんたもしかしてクロ?」



空いていた長椅子に座って皆さんと雑談しながら待っていると女の子の声に呼ばれた。

私たちが顔を上げた先には髪を桃色に染めたチークの濃い同年代の女の子が一人…。否、なんか更にギラギラした人たちが集まってきた。緑髪だったり金髪だったり…。

………信号機?



『私に何かご用ですか?』


「べっつにー。まだ生きてたんだなぁって思っただけよ」


「黒本丸に飛ばされたって聞いたからとっくに御陀仏してるかと思ってたのにねぇ」


「あはは!それ本人に言うとかひっどーい」



ケラケラと笑いながら色々言ってくる彼女たちはどうやら私のことを知っているらしい。そして勝手に私のことを死んだと思っていたようだ。

酷いとか言いながら笑ってる貴女も相当性格悪いですよ?わかっていますか?


…皆さんから何やら不穏なオーラが出てきている。膨れ上がる前にさっさと立ち去ろうかと思ったけれど、その前に彼女たちは笑いを止めて目を丸くした。驚いているらしい視線は一期と小狐丸に向けられている。

…イラついてはいましたけど殺気は向けてなかったですよね?二人とも。大丈夫でしたよね?



「ちょっと!なんであんたみたいなのがいち兄と小狐丸持ってるわけ!?」


「落ち着きなって!どうせ黒本丸のお下がりでしょ?」


「!ああ、そっか。お下がりね。ははっ!あービックリした。言われてみればそうよね。なーんだ、じゃあズルして手に入れたようなモンじゃん!あんたが主なんて刀剣たちカワイソー」


「カワイソー!あははは!」



……なんか前にも似たようなことありましたよね。確か加州と乱を連れて会議に出たときに。

毎度のことながら、ついてきてくれた彼らに申し訳ないです。



『…あの』


一「お言葉ですが、審神者様方」



そろそろこんのすけも帰ってくるだろうし止めようかとすると、一期と小狐丸が私を庇うように立って遮った。



一「私たちは確かに主にとってはお下がりも同然です。しかし、黒本丸で酷い仕打ちを受け敵意剥き出しだった我らの手を正しき道へと引いてくださったのは、他でもないここにいる主なのです」


小狐「左様。ぬしさまがおられなければ…、私共は既に闇へと落ちていたことでしょう。私たちは"カワイソー"ではありません。ぬしさまだからついていっているのです。
…あまりぬしさまを苛めるようであれば、私共も黙ってはいませんよ」



赤い瞳を妖しく煌めかせながら言う小狐丸に女審神者たちは身震いした。人間の顔から血の気が引く瞬間ってこうなるのですね。

一期もこちらからは見えないけれど、きっととても良い笑顔を浮かべているに違いない。物凄く優しい声音で言っていましたし。



『一期も小狐丸も怒らせてはいけませんね』


薬「いち兄は俺たち兄弟でも恐ぇからなぁ。逆らえねぇし」


五「で…でも、いち兄の言ってることは…正しいから…」


 

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