「…行こうぜ、大将」
「もう良いのですか?」
「ああ。いつまでもこんなとこで悲しんでたって、このいち兄が報われるわけでもねぇ。さっさと仕事終わらせて、江雪の旦那に読経してもらいてぇしな。小夜からも頼んでくれよ?」
「うん…。兄様なら言わなくてもやりそうだけど…」
「あははっ、確かにね!」
「んじゃ、続きに行くとしようぜ」
小夜の頭を撫でながらニッと笑う薬研に、乱も自然と笑みが溢れた。流石は粟田口兄弟の兄貴分。沈んだ士気を一気に高めてしまった。
…私には見えた。薬研の藤色の奥深くに、悲しみの色が宿っているのを。それを追いやってまで進もうとする彼の心はとても強かった。
「あるじさま、おいていかれちゃいますよ?」
「そうですね。では私たちも……?」
「あるじさま?」
ふと足元にあった四角い何かが目に映って歩みを止めた。
「大将?」
「どうしたの?」
それを拾い上げると、待たせてしまった薬研たちが戻ってくる。拾ったそれは写真だった。この審神者が撮ったのだろう、写っていたのは…
「!″彼″は…」
「ん?ああ、厚だな」
「あ、ほんとだ。いち兄と厚だ」
「え…」
あつし…?
厚…藤四郎?
″彼″が?
その時、今まで静寂を保っていた空気がビリビリと揺れた。人間でも刀剣でもない…感じたことの無い気配にそれぞれが刀を抜いて構える。
けれど、私は一度感じた。
「…、これは…」
あの記憶の中で、一番最後に現れた″彼″の気配だ。
バキバキバキィッッ
隣室の襖が破かれ、現れたその姿も私が視たものと同じ。真っ白な骨に包まれ、漆黒の闇を背負ったその姿。ギラギラと獲物を見詰める紅く輝く瞳。
そして、その面影は…
「な…っ!!?」
「あつ…し…?」
写真の中、一期一振と共にニカッと笑う
″厚藤四郎″だった。