雑談しながらも警戒は怠らず、その部屋だけを目指していく。訪れたそこは、先程の争いで更に荒れてしまっているけれど、ソレ自体はそのままだ。
「…また来ることになるとはな」
審神者の部屋。御遺体は…元々が無惨な状態だから何とも言えないが、踏まれることもなく無事だった。
近づいて御遺体に意識を集中させ、よく目を凝らしてみてわかった。やはり、ココにある。
「今剣、顕現してください」
「はい」
「では、先程言った通りに」
「わかった」
「うん」
「気を付けてね、主さん」
今剣にも顕現してもらい、それぞれが部屋の四隅に立って刀を抜く。準備が整ったことを確認して、私は御遺体に手を合わせた。
「…失礼致します」
そっとそのお腹に手を伸ばす。
ぐちゅ…
挽き肉を捏ねるような音が耳につく。手触りはもっと生々しいが、やめるわけにはいかない。
審神者の腹の中、引き摺り出された内臓の更に奥。肋骨に隔たれた隙間に指を入れる。
……クチャ…
「…まさか、こんなところにあるとは誰も思いませんね」
薬研に目配せをし、頷いたのを見てソレを一気に引き抜く。
ぎゃあァァあぁあアァああああああ!!!
「今です」
「「「「はッ!!」」」」
私の合図で四人は自身の依代を床に突き立てた。そこから中心にある御遺体に向かって、彼らの神気が注がれる。私も御遺体から溢れ出る邪気を浄化しながら悲鳴の中心を見やった。
光に包まれながらもがくのは、この御遺体に閉じ込められたままの審神者の霊。中から取り出したソレは、内側に張ってある結界の為の呪符だった。
この結界は審神者と刀剣男士を閉じ込める為のもの。外からの侵入を許し出ることは出来ないという、本来あるべき結界とは違う特殊なものだ。それが出来るのはこの本丸の持ち主である審神者の霊力をもってのみ。
つまりこの審神者は結界の依代…、贄とされたのだ。殺されても尚、自分の肉体の檻に呪符で閉じ込められて。
ぅ…ぐ………うぅ……っ
「ずっと…、こんなところにお一人で、さぞお辛かったことでしょう」
だいぶ浄化されたのだろう、蹲って泣いている彼の頭に汚れていない左手を添える。
「もう、安らかにお眠りください。………″滅″」
右手で印を結び、言霊を紡ぐと呪符が青い焔に包まれる。それと共に、彼の姿もだんだんと薄れていった。
─………………
「え?」
─………………………
最後に穏やかな表情をした彼は、やがて光となって天に召されていった。御遺体も一緒にサラサラと消えていき、血の跡だけがそこに残された。