ボックスに届いていた新しい竹刀を手に庭に向かう。鍛練場は掃除しなきゃ使えないし、庭でやったって問題無いだろう。

彼もそれをわかっているようで、私から距離をとったところで向かい合わせに立ち止まった。



「…一本勝負で宜しいですか?」


「十分です」


「では…」



始めましょうか。










───その頃、広間では…



「…で、結局のところお前らはどうするんだ?」



クロに手入れされた刀剣たちが、今後主従契約を結び彼女と共に歩むのか…。彼女との関係についてを鶴丸が中心となって議論していた。



「アタシはあの子が主になるのに賛成だよ」


「同じく」



次郎太刀に続き太郎太刀、左文字兄弟も異論は無いと頷く。



「いち兄たちはどうだ?」


「…そうだね。私も賛成かな。…彼女に触れてもらってわかったよ。すごく暖かくてお優しい方だ。
薬研の見る目は正しかったみたいだね」


「そりゃ良かった」



一期一振を初め、粟田口兄弟も手入れされた時の彼女を思い出して柔らかく微笑む。彼女に触れてもらった所がまだ暖かく感じる。



「兼さんも良いよね?」


「まぁ…前任と違うのはわかったしな」


「前任なんかと比べ者にならないって!雲泥の差だよ!はぁ〜新しい主可愛い」


「…お前あの子と何かあったわけ?昨日まですんごい沈んでたくせに」


「…煩いよ。安定だって主のこと認めてるんでしょ?」


「そこは同意するけどね」


「岩融は、まだあのひとにあわないとわからないですよね」


「がははははは!いいや、俺も賛成だな!あれだけ大きな傷を跡形も無く癒した力の持ち主だ。感謝こそあれ反対意見など持ち合わせておらん!」


「でも、まだどんなひとなのかも…」


「今剣よ、お主は反対なのか?」


「ぼくはさんせいしてます!」


「なら良いではないか!前任を酷く嫌っていた今剣が認めておるのなら良い人間に決まっておる!」


「!岩融…」



彼女の霊力が各々の身体に宿ったからこそ、前任がどれだけ酷かったのか、彼女がどんなに自分たちを想って手入れしてくれたのかがわかった。

彼女が主となることに反対する理由はもうどこにも無い。何も話しはしないが、大倶利伽羅も反論せずこの場に留まっているところを見るに賛成はしているようだ。

主を認める者が増えていき、最初に認めていた薬研たちも嬉しく思う。
が、改めて周囲を見回して人数が少ないことに気づいた。



「あれ?五虎退と前田はどうしたんだ?」


「長谷部もいないな?」


「五虎退と前田なら、虎が一匹足りないって探しに行ったよ」


「長谷部くんは厠に行くって出てったけど…。言われてみれば遅いような…」


「たっ、大変です!!」



そこへ、頭やら腕やらに虎を連れた五虎退と前田が焦った様子で駆け込んできた。



「あっ、虎見つかったんだね」


「は、はい…って、それもそうなんですけど…っ」


「何かあったのかい?」


「今、新しい主君と長谷部殿がお庭で手合せをされてるんです!」


「は?主と長谷部が?」



何を焦っているのかと思えば、人と刀の手合せ?
全員が隣にいる者と顔を見合わせたり、それについて考え込む。

人間で、しかも女人の主が何故、長谷部と手合わせを?主は薬研と共に戦場を駆けたというのだからそれなりには戦えるということだ。心配はいらない…のか?

いやしかし、へし切長谷部はこの本丸にいる刀剣男士の中でも非常に機動力に優れた刀だ。人の身でその機動について来れる者が果たしているのかどうか…

いやいや、だが単なる手合せなら気にするだけ無駄…



「お、お二人とも竹刀なんですけど…、なんだか…長谷部さんは…本気みたい…で……」


「竹刀とは思えない音がしたり地面が抉れたり石燈籠が破壊されたりしていました!」


「めちゃくちゃ本気だね!?」


「長谷部の奴ッ俺の主に何してんの!?」


「ちょ、落ち着きなって!」


「ったく、主も主で何してんだか」


「はっはっは。元気があって良いではないか」


「…じいさん、″孫″が怪我しちまうぞ?」


「む?それは嫌だな」



止めに入るかと腰を上げる三日月たちに続き、他の刀剣たちも動き出す。
ある者は新たな主を守ろうと。
ある者は主の力を見定めようと。



「…………」



そんな中、薬研藤四郎だけは広間を出ていく彼らの背中を見つめ、静かに息を吐いてからその後を追った。


 

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