「……ということで、明日の審神者会議に二人連れていくことになるのですが。どなたか一緒に来て頂けますか?」
「「「「「…………」」」」」
「……因みに会議の後は妹のお見舞いに…」
「「「「「行く!!!」」」」」
「「「「「行きたいです!!!」」」」」
「…………」
「ほら、言った通りでしょ」
言われた通りでした。
お夕飯の後、デザートにと光忠が剥いてくれた林檎をシャクシャクと食べながら明日の予定を告げると、会議の話では皆さんとても嫌な表情になった。眉間に皺を寄せたり目を細めたり…。心底政府嫌いなんですね、私もですが。
でもシロのお見舞いには行きたいらしく、勢いよく手を挙げる者多数。困りました。こんなにいるとは。
「刻燿と太郎と次郎と岩融は、すみませんが大きいのでお留守番でお願いします」
「わかったぁ〜」
「えぇええ、アタシも妹ちゃん見てみたいのにぃ」
「すみません…」
「次郎、主を困らせてはいけません」
「ふむ。残念だが、仕方あるまい」
ぶーぶーと文句を言う次郎に、お土産に美味しいお酒を買ってくると言うとパアッと笑顔になった。現金だなぁと思ったのは私だけではないだろう。
「で?どうやって決めるんだ?」
「無難にジャンケンでもしようかと」
と言うとジャンケンを知らない者多数。そりゃそうですよね、ジャンケンの無い時代でしたもんね。
簡単にやり方を説明し、理解してくれたところで今回のルールを提示する。
「私とのジャンケンで、私に勝ち続けた二人を連れていきます。負けとあいこは内番に専念してください」
「要は勝ち残れば良いんだな!」
「はい」
「よーし、まけませんよー!」
「では…いきますよ?
じゃーんけーん」
「んで、″やまとのかみ″くんと″やげん″くん?に決まったんだ?」
「うん」
「その二人は今その座を奪わんとする皆に追われていると?」
「うん」
現在、離れの縁側でシロに通信中。一応どんな刀剣を連れていくのかは伝えておこうと思ったのだ。
「良いの?私と話してて」
「座を譲るか死守するかは二人に任せる」
ジャンケンで見事に勝ち残ったのは昼間に一緒に話していた大和守と、以前シロについて話した薬研だった。
偶然か必然か…思った通りというか。特に会いたそうにしていたこの二人が残ったのは執念でもありそうな…。まぁいいか。
大和守が勝ったことで加州と和泉守が「交代しろ!」と迫り、小狐丸や鶴丸たちも加わって追いかけっこが勃発。薬研の方も同じく乱に鯰尾に骨喰も巻き込まれ、長谷部にまでしつこく追い回されている姿が何度も私の前を横切っていった。
あんなに逃げ回るのだから座は譲らないということなのだろう。心の中で頑張ってくださいとエールを送っておいた。
「ふふ、会いたいって思ってくれるなんて嬉しい。あーあ、私もそっち行きたいなぁ」
「まだ我慢」
「わかってるって。……ごめんね」
「?」
「我慢させてるの、私の方なのに…」
しゅん…と落ち込んだ片割れの声は震えていた。普段元気に振る舞っていても、不安があるのはシロも同じなのだ。
手術をすれば治るのに、その為のお金が無いからと入院して早くも十六年目の闘病生活。目に見えない病と闘うシロの為に早くその手術代を貯めなければと思うのに、なかなかその額は高すぎて届かない。
お金を貯めようと仕事に専念する私が色々と我慢していると思っているらしい。シロはそれを気に病んでいるようだけれど…
「ばーか」
「ちょっ!?バカって酷い!」
「なら大バカ」
「一緒!もっと酷くなってるから!!」
「私が欲しいのは姉妹の時間」
「!!」
「家族の時間。それだけ」
「クロ…」
ずっと夢見てきた。
朝起きて、隣に眠っているシロを起こすのは私の役目で。ご飯を二人で作ってそれを食べ、洗濯したり談笑したり。日課をこなして疲れたところで「おやすみ」と言ってまた一緒に眠る。
ただそれだけのことがしたいのだ。
家族と過ごしている人たちにはわからないかもしれない。でも私が欲しいのは、この世に一人だけの家族と過ごす時間。シロと生きる時間だけなのだ。
「引く?」
「バカはクロもじゃん!引くわけないでしょ!私もクロと生きる時間が欲しいもん!」
「それならお金貯まるまで精々頑張って生きて頂戴」
「精々って酷いなぁ!でもそうだね。頑張るよ!」
ガッツポーズをするシロを見て安心した。″病は気から″とも言うし、元気じゃないシロなんて彼女らしくないし見たくない。
シロが笑っていてくれれば、それだけでも十分私は幸せに思えるから。