時の政府敷地内にある病院。ここにシロが入院している。再び政府へと戻ってきた私たちは隠形の呪を解き、彼女のいる病室へと足を運んだ。



「…不思議な光景だな」


「そうだね。刀剣男士がこんなに…」



驚くのも無理もないだろう。この病院は私のように審神者になった者の親族だけが入院している。

時の政府にあるからといって他の病院より優れているわけでは決して無く、審神者がお見舞いに来やすいようにと建てられたのだ。だから、私と同じく刀剣男士を連れている審神者が沢山おり、患者さんたちも彼らと触れ合うことで元気づけられているようだ。シロも待ち兼ねていることだろう。


406号室
猫塚 朝陽


…お墓の時もつっこまれなかったし大丈夫だろうけど、一応確認しておこう。



「これ、読めますか?」


「??いいや。何か書いてあるのか?」


「シロの真名です」


「…………」


「主、お願いだからもうちょっと警戒しよう?」


「貴方たちを警戒したって何にもならないでしょう?さ、入りますよ」


「「………はぁ…」」



何やら溜め息が聞こえたけれど気のせいということにした。

コンコンとノックすると「どーぞー!」と元気な返事がし、戸に手をかけ…

ガラッ

…る前に開いたと思ったら身体にトンッと軽い衝撃が当たって抱き締められた。



「やっと来たぁ!久しぶり、クロ!」


「久しぶり。元気そうだね、シロ」


「もっちろん!」



昨日も連絡入れてたから元気なのは知っていたけど、やっぱり実際に会って確認するとほっとするものだ。

日に当たっていないシロの肌は渾名の通り真っ白で、髪も薬のせいで随分前に色素が抜け落ちた。なのにシロは悲しむどころか「見分けがつきやすくて良いじゃん!」なんて笑うものだから、心の強さは侮れない。



「ほらほら早く入って入って!後ろの二人が付喪神様なんでしょ!?早く紹介してよ!」


「はいはい」



半ば強引に手を引かれ、病室に入って戸を閉めた。
シロは定位置であるベッドの上に戻り、私はその脇に座る。薬研と大和守にも座るように促したけれど、どうやらまだ現実が飲み込めていないらしく、部屋を見たまま棒のように突っ立ってしまった。

シロの病室は今や完全に私室と化している。
特別に設置されている棚には小さい頃にあげたぬいぐるみがところ狭しと並べられ、ベッドにも巨大なカピバラが寝そべっている。
ベッドの下にもプラスチックのケースがいくつもあり、その中には裁縫セットやらビーズアクセサリーセット。枕元には私とシロの小さい頃の写真が飾ってあって、本棚には私のお古の教科書がある。

どこをどう見たって病人の部屋じゃありませんよね。

因みに本丸の私の部屋にあるのは箪笥と本棚に少々物が入っている程度。二人はその差を受け入れるのに必死なようだ。



「薬研、大和守。大丈夫ですか?」


「あ、ああ…」


「う、うん…ごめん。なんか色々混乱して…。ていうか二人似すぎじゃない?」


「そりゃ双子だもんね」


「「ふ、双子ぉ!!?」」


「あれ?クロ、言ってなかったの?」


「………言ってなかったかも」



思い返してみれば、妹がいるとは言ったけど双子だとは伝えてなかったような…。そうか、だから二人ともこんなに混乱してたのか。そりゃ瓜二つの顔が揃えば驚きます…か??

まぁとりあえずはお互いに自己紹介してもらおう。



「シロ、自己紹介。名前は聞こえないように呪が掛かってるから」


「ほいほーい。
初めまして、付喪神様。クロから聞いてるだろうけど、私はクロの双子の妹で渾名は"シロ"。シロって呼んでね!」


「(……大将に聞いてた通り明るい子だな…)
俺っちは薬研藤四郎だ。藤四郎は兄弟刀多いから薬研で良いぜ」


「(中身は全然似てないんだね…)
僕は大和守安定。呼び方は何でも良いよ」


「じゃあ、″薬研くん″と″大和くん″って呼ぶね!よろしく!」



……シロ、何だかいつもよりテンションが高いような?…目の前に刀剣男士が二人もいるからなんだろうけど。

病院内を彷徨いている審神者と刀剣男士を見たことはあっても、直接会話するのはこれが初めてだもんね。そりゃ興奮もするか。

あ、そうそうお見舞い渡さなきゃ。



「はい、これ」


「わぁ!ありがと!クロがくれるフラワーアレンジメント大好きなんだよねー…て、あれ?このガーベラとチューリップは?」


「さすが目敏いね。その二輪は薬研と大和守に選んでもらった花」


「!!ガーベラが薬研くんでチューリップが大和くんでしょ!?」


「正解」


「な、なんでそこまでわかるんだ?」


「さ、さぁ…」


「ふっふっふー!シロちゃんにかかればわからないものは無いのだぁ!!」



毎日何かしら本を読んでるもんね。花言葉の本も熟知しているし、初対面の人間観察(今回は付喪神観察か)は得意な子だからすぐにわかったのだろう。

嬉しそうにフラワーアレンジメントを抱いたシロが満面の笑みで二人にもありがとうと伝えると、薬研ははにかみながら、大和守は頬を朱に染めてどういたしましてと答えた。



「クロ、林檎ジュース飲みたい。買ってきて!私と、薬研くんと、大和くんの分!」


「は?」


「あ、二人とも林檎は好き?」


「えっ?う、うん…好きだけど…」


「じゃあお願いね!」


「わかった。薬研と大和守は、すみませんがシロの相手をしていてください」


「ちょ…、たいしょ?」



戸惑う二人を置いて病室を出た。
ジュースは本当に飲みたいのだろうけど、あれは遠回しに″席を外してほしい″という意味だと悟った。

話す内容は…双子だからだろうか、なんとなくわかる。大方、本丸での私のことを聞いて、私について色々教えるのだろう。私たちはお互いにお節介なところがあり、私が考えることをシロも同じように考えるから。

それでも何を話すか気になるところだけど、チョーカーと政府との関係だけは言うなと言ってあるから大丈夫だろう。










「さてと。どこで暇を潰しましょうか」


 

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