──夜。
「あっはっは!こんなに酒が飲めるなんて良い夜だねぇ!じゃんじゃん盛り上がっていくよ!かんぱーい!!」
「「「「「かんぱーい!!」」」」」」
「貴女は混ざりに行かなくて良いんですか?」
「……ダメでしょうか?もう良いと思うのですが…」
「僕もそう思う…」
「…かれこれ…七回目のかんぱいですからね」
桜の木の下に蓙を敷いて盛り上がる皆さんを、私は左文字兄弟と共に縁側で眺めている。距離はそんなに遠くはない。
最初こそ私もあちらに混ざっていたけれど、お酒の匂いがだいぶ充満してきた為に席を離れさせてもらったのだ。今日は短刀たちもお酒だ。見た目は子供でも流石は神様、皆さんそこそこ酒豪らしい。
「お三方こそ良いのですか?お酒とって来ましょうか?」
「お気になさらず…」
「僕らはあまり酒は好みではないんですよ。お茶で十分です。それに酒に手を伸ばせば、せっかくここに避難して来たのに絡まれるのは目に見えてます」
「もう一期さんが捕まってるし…、ああなるのは…」
「……確かにそうですね」
視線の先には酔い潰された一期とそれを介抱する薬研と厚。厚は来たばかりで苦労させますね。
(…でも、楽しめてるようで良かったです)
正直ちょっと不安ではあったのだ。前にいた兄弟と、ここで出会った兄弟。同じ容姿でも同じ性格でも、思い出は全く違うのだ。
その差を受け入れるのは難しいだろうし、もっと時間が掛かると思っていたのだが…、どうやら順応性は高かったらしい。付喪神様だからなのか、刀だからなのか…、そこは人間の私にはわからない未知の部分とも言えよう。
「……書けた」
「では飾りに行きますか」
「ええ。…少々、行って参ります」
「はい、行ってらっしゃい」
小夜が短冊を書き終え江雪と宗三も笹に向かっていった。
…あ、江雪と宗三が次郎に捕まりましたね。小夜は今剣と短刀グループに引っ張られました。これは戻って来そうにないですね。
そのタイミングを見計らったかのように、熱燗とお猪口を持った鶴丸が現れた。真っ白の彼の頬はお酒のせいか少しだけ赤い。
隣に座布団を敷くとお礼を言ってそこに座り、私の手元にある二枚の短冊を見た。
「楽しんでいるか?そんなに悠長にしていると七夕が終わってしまうぞ」
「楽しいです。大丈夫ですよ、夜明けまでには書きます」
「悩み明かす気か!?」
「冗談です。皆さんはもう全員飾ったのでしょうか?」
「全員かはわからんが、あの短冊を見る限りじゃほぼ飾ったんじゃないか?今剣は〈おおきくなりたい〉と書いていたし、加州は〈もっと可愛くなりたい〉だったな」
「彼ららしいですね。鶴丸は〈更なる驚きを求む〉ですか?」
「見たのか?(一言一句違わねぇ…)」
「見ずともわかりますよ」
「ハハッ!そんなにわかりやすいとは俺もまだまだだな!」
笑いながらまた酒を煽る。少しは酔っているのだろうか、笑い方がちょっとだけ次郎に近い。明日に響かなければ良いけれど…。
そんな心配をしていると鏡に通信が入った。やっとか。
「や!楽しんでる?クロ」
「うん。検査は終わった?シロ」
「!」
通信相手はシロだ。夜の検査が終わったら連絡するという約束だった為、私もこれを待ってから飾ろうと思ったのだ。
聞いた通りに白い短冊に筆で書く。
書くけども…
〈健康祈願!! シロ〉
なんというか、願い方もやはり彼女らしい。
「どう?楽しい?」
「うん」
「天の川は?」
「すっごく綺麗だよ。ほら」
「あ!ほんとだ綺麗〜!ならちゃんとお願い事叶えてもらわないとね!」
「だね」
鏡を空に向けると興奮したような声が聞こえてきた。ちょっとでもシロも楽しめればと思う。