「でも、そうですね…。こうも暑いと皆さんも参ってしまいますよね」



ミンミンと煩い蝉の声に、ジリジリと照りつける太陽光。気温がどうであれ、この二つが揃えば"夏"という感じがする。

刀剣の彼らだって今は人の身を得ているのだから、感じ方は人と同じ。寧ろ私より動き回っている彼らの方が暑いだろう。



「大将は全然暑がってるように見えねぇぞ?」


「私だって人並みに暑さは感じていますよ。無駄に動くと余計に暑いから動いてないだけです」


(春より必要最低限にしか動かねぇと思ったら…)


(大将なりの暑さ対策だったのか…)


「クロ様」



そこへ、書類を回収に来たのだろうこんのすけが現れた。薄っぺらい紙を一枚くわえて。



「お疲れ様、こんのすけ。はい、今日の分の書類」


「ありがとうございます。クロ様はいつもお早くて助かります」


「これくらい普通」


「普通じゃない審神者様はごまんとおられます…。瑠璃様然り…」


「あー…」


「揃って目が死んでるぞ」


「こんのすけも大変なんだな。お疲れさん」



厚と薬研が労るようにこんのすけをポフポフする。

何だろう、この平和な画。写真に納めておきたいです。



「うぅ、ありがとうございますっ。
あ、それでですねクロ様。こちらに目を通して頂きたく…」



差し出されたのはさっきまでくわえていた紙。
何かのチラシ?



「…時の政府…イベント開催?」


「いべんと?」


「はい。多くの審神者様には現世から離れて本丸での生活に移って頂いております。故に現世で催されているイベント…行事ですね。刀剣男士を連れ立ってそれに参加できないことへの審神者様からの不満が政府に…」



あれま。政府にと言っているけれど、様子を見るに直接こんのすけが言われているようだ。ブルブルと震えているもの。

夏は特にイベントが多いらしいし、審神者側の不満も尤もなことなのだろう。私は参加したことが無いけれど、花火大会やお祭りだって夏のイベントの一つだし、いつかシロと行けたらなぁと思うのは毎年のことだ。



「そこで、政府側が考えた対策がそのチラシになります。時の政府が主催者となり、審神者様及び刀剣男士のみが参加できるイベントです。一般客がおりませんから呪は必要ありません」


「へぇ」


「流石に審神者様を同日全員参加させることは出来ませんので、一つのイベントにつき数日間開催。ですから、人が溢れすぎることはありません。各審神者様に割り当てられた日付でのみ、一つだけ参加可能となっております」


「政府もよくそんなの考えたな」


「考えざるを得なかったんです…」


「悲しいこと言うなって!」


「うぅぅ…っ。と、とりあえずそのチラシは明日回収させて頂きますので、参加したいイベントと日付に印をお願い致します。尚、刀剣男士は一部隊分…、つまり六名までの参加となりますので御了承くださいませ」



そりゃそうだよね。審神者と顕現してる刀剣男士全員連れて行ったら、同じ顔が何人も集まる上に男士で溢れ返ってしまう。…見てみたい気もするけれど。

こんのすけはそれだけ伝えると書類をくわえて戻っていった。



「さて、と…」


「政府もよくやるな」


「審神者と刀剣男士の息抜きも兼ねているのでしょう」


「ふーん」



イベントか。
七夕の時もそうだったけれど、イベントなんて参加したのは小さい頃に数回だけ。母さんもシロも入院していたし、楽しいものだと思ったことはあったかどうか…。

今回のこれに関しては刀剣男士も参加可能だし良い案だと思う。思うけれど…



「…………」



またシロが一緒じゃないのが悲しい。あの子にだけ、また我慢させてしまうことが悔しい。それなら参加しなければ良いけれど、そしたら皆さんに我慢させることになって…。

ああもう、いつからこんなに欲張りになったのだろう?全てが思い通りになることなんてまずあり得ないのに。



「大将?」


「どうかしたのか?」


「…いえ。明日回収と言っていましたし、お夕飯の時に皆さんにお話ししましょうか。一応告知だけしておいて頂けますか?」


「わかった。またジャンケン大会だな」


「行ける人数も限られてるしな」



ああ、またやるんですねジャンケン。皆さん負けても楽しそうですから良いですけど。



「んじゃ、俺乱たちに言いに行くわ!」



また後でな!と元気良く出ていく厚を見送る。

行き先はあの視線のある茂みだ。まずは短刀たちに告知するのだろう。一番行きたがるのは彼らでしょうからね。


 

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