三人を広間に通し、再びお茶の席につく。と言っても、やはり暑いから皆揃って吹きさらしの縁側に腰掛けただけなのだが。今日は良い風が吹きますからね。
私の隣には瑠璃。そして翡翠さんと瑪瑙さんという順番に。
瑠璃と翡翠さんが隣合わせなのは恐らく彼女のパートナー兼ストッパー的立ち位置だからだろう。任務でもないのにご苦労様です翡翠さん。
風鈴の音を聞きながら麦茶を飲み、遊びに来たという彼らと他愛もない雑談をする。自分の本丸はどうだとか、刀剣達の様子とか…。今日くらいは仕事の話は抜きにゆっくりしようということらしい。
…瑠璃を暴走させないための布石を打っているようでもありますね。
「そうそう、クロ。あんたもイベントは夏祭りにしたのよね?」
「………"も"?」
「そ!あたし達も夏祭りなのよ!一緒に行けるわね!」
「"たち"?」
楽しみぃ〜と鼻唄を歌い始める瑠璃の向こう、翡翠さんと瑪瑙さんに目をやれば見事に逸らされた。不本意だったと空気が語っている。
「いやぁ…ね。俺も翡翠も特に理由もなく夏祭りに印付けたんだけどさ…」
「瑠璃嬢が真黒のヤローに迫って聞き出した」
「よくわかりました、ありがとうございます」
つまりは妹より気の弱い真黒さんのせいということですね。次に会ったらどうしてくれようか。
「っ!な、なんか悪寒が…。すまん、クロ!!」
まぁそれは追々考えるとして、この雰囲気だと四組揃っての夏祭りになりそうだ。人数も多いから回る時には組分けするでしょうけど。
「だからさ、浴衣買いに行きましょうよ!これから!」
「はぁ?」
「これから?」
「うん!持ち合わせないならあたしが全員分出す!」
「男前な発言だけどそれはダメだからね?持ち合わせあるからね?ホイホイ使って良い物じゃないんだよお金は」
流石は御令嬢。金銭感覚がおかしい。浴衣なんてそんな安いものではないのに。
私のは運良くとても安価で手に入ったものだけど、質の良いものは一万円どころじゃないくらい高い代物だ。一着買うだけでもお財布の中身を確認しなきゃいけないところを、この子は…。
「それからクロ!あんた今買わなきゃ絶対その浴衣着て行くでしょ?」
「うん」
「「うん」じゃないわよ!いい加減明るいやつも着なさい!あたしが選んであげるから!」
「え。だったら次郎と乱と加州連れてく」
「どういう意味よソレ!」
「センスねぇってことだな」
「翡翠!その口縫い付けるわよ!!」
「おーおーやれるモンならやってみやがれ力馬鹿女」
何やら不穏な空気が…。これはさっさと買い物行った方が良さそうだ。また衝撃波放たれたら堪ったもんじゃない。
「今更ですけど、三人とも近侍は連れて来なかったのですか?」
「それがね…。俺と翡翠の本丸は結構近いから連れずに行き来できるんだけど…」
「気づいた時には瑠璃嬢に引っ張られてお前んとこ向かってた」
「連れて来なかったのではなく連れて来る"間"もなかったわけですか」
義姉のせいで申し訳ないです。
そうなると、こちらから四人連れていくとしましょうか。万屋への行き帰りに何かあっても困りますからね。
席を立って瑠璃と翡翠さんの口論を背に聞きながら、私は出掛ける準備を急いだ。
「…ということで浴衣を買いに行かねばならなくなりました。三人とも近侍がいないので、すみませんが次郎と乱と加州と刻燿についてきて頂いても?」
「もっちろんだよ!」
「たまにはあの子も良いこと言うじゃないか!」
「これ、失礼ですよ次郎」
「主に似合う可愛いやつ選んであげるからね!」
「よろしくお願いします」
「…………」
「あれ?刻燿さん機嫌悪い?」
「…なんでもないよ〜」
「すみません、刻燿」
「へーき。クロちゃんはボクが守るからね〜」
「はい」