何と答えようかと思っていると、タイミングを見計らったかのように鏡に通信が入った。

少々失礼しますと皆さんに断りを入れてから繋げると、表面に波紋が広がり相手の顔が映し出された。



「あ、クロちゃん。久しぶり」



誰かと思えば、パートナーの瑪瑙さんだった。言葉を交わすのはあの特別任務以来ですね。



「お久しぶりです、瑪瑙さん。腕は大丈夫ですか?」


「うん。まだ少し痛むけど、現世より治りは早いからそろそろ復帰できそうだよ」


「それは良かったです。それで、何かあったのですか?」



こうして瑪瑙さんが連絡くれるのは二度目。最初は特別任務の編成の為だった。今回も仕事関係だろうかと思っていると、何やら鏡の向こうから他の音が聞こえてきた。

…否、他の音というか…声?
しかもこの声は…



「瑪瑙さん、今他に何人いらっしゃいます?というか、何処で何方と何をしているのですか?」


「あはは…。クロちゃんは敏いね。大方予想はついてると思うけど、ある人が今君の本丸に行くってきかなくてさ。向かう足を引き留めようと奮闘してるところ」


「瑠璃様ですね」


ビクゥッ!!


「…………」



わぁ、皆さん凄いです。肩を跳ねさせるタイミングまでバッチリとは。しかも蒼白という顔色まで一緒。そんな露骨に表さなくても。

三日月おじいちゃん、鶴丸、笑顔のまま固まらないでください。江雪と宗三も眉間に皺が…。あぁああ太郎にまで…。刻燿、依代に手を添えないでください。



「ご名答。翡翠の本丸に遊びに行ったら瑠璃もいてね。「黒本丸修復更正部隊!せっかく揃ったんだからクロとも遊ぼう!」って…」


「ということは、後ろでやり取りしてる声は瑠璃様と翡翠さんですか」


「そういうこと」



はぁと溜め息を吐く瑪瑙さんも何だかお疲れのようだ。であれば、翡翠さんも相当…。

仕方ありませんね、餡蜜用意しておきましょうか。



「本当はいきなり行ってドッキリサプライズするとか言ってたんだけど、連絡入れとけって翡翠に目配せされてね」


「有り難いです、とても」



いきなり来られたんじゃ前と同じ結果を生み出してしまう。再び厩破壊は勘弁です。



「どうする?向かって平気?無理ならなんとか説得して止めるけど」


「いえ、そこまでして頂かなくても連絡頂けただけで十分です。心構えができましたから」


「はは、凄い言われようだな」


「お茶を用意しておきます。でもできるだけゆっくりお願いしたいです。迎える準備がありますから」


「了解、頑張ってみるよ。じゃあ、また後で」



鏡が揺らめいて瑪瑙さんの姿が消える。ふ、と一息吐いて顔を上げると…、はい。皆さん準備万端といったように真剣な眼差しを向けていた。

それぞれの前には空っぽになった餡蜜の器。私が通話している間に、ちゃんと腹に納めるべき物は納めたらしい。



「聞いた通りです。瑠璃様、瑪瑙さん、翡翠さんがいらっしゃいますので迎え入れる準備をお願いします。堀川、光忠、江雪、宗三は器を片付けて麦茶と餡蜜を三つ用意してください」


「わかった!」
「了解!」
「ええ」
「わかりました」


「乱、前田、五虎、今剣、厚、骨喰。貴方たちは広間の片付けと掃除を」


「はい!」
「わかりました!」
「は、はいっ!」
「いそぎますね!」
「おう!(…て、そんな要注意人物なのか?)」
「わかった」


「さて、他の皆さんですが…、一番重要な仕事をお願いしたいと思います」



そんなことしても気休めにしかならないのだけど、しないよりはマシだろう。

身構えている彼らも何をするかは大体わかっているようだ。だってあの驚き提供鶴丸まで真面目な顔して待っているのだから。



「瑠璃様にまた何か破壊されては堪りません。厩の補強。畑周りに柵の設置。他にも脆いと判断した場所も時間の許す限り補強してください」


「拝命致します!」
「はいよ!」
「了解しました」


「では、解散」



各々返事をしてバタバタと散っていった。一致団結とはこういう行動を言うのだろうか。

他人が見たら大袈裟だと思われるだろう。でもこれくらいしないと(本丸に)何かあってからでは遅いのだ。
なにせ彼女は前回の任務で本丸を壊滅させた女だ。最悪私たちの家がなくなってしまう。それだけは避けなければ。

私も残りの溶けきったアイス入り餡蜜を平らげ、補強組に加わって点検を開始した。

…お三方の到着は最後の釘を打った直後のことだった。










「やっほークローーーーッ!!」

ひょい

「ちょっ、なんで避けるのよ!?」

「暑苦しいです、抱きつかないでください瑠璃様」

「敬語!様付け!」

「暑い、寄るな瑠璃」

「酷い!っていうか、なんでいきなり来たのに驚いてないわけ?」

「瑪瑙に連絡入れといてもらったからな」

「なんでよ!?」

「お前は台風みたいな女だからな、竜巻つきの。被害は最低限に抑えねぇとな」

「なんですってぇええええ!!!」



「ありがとうございました、瑪瑙さん」

「はは、どういたしまして。あとは何事もなく帰れるのを祈るよ」

「同感です」


 

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