そうして食べ物屋が続いていった先にはクジ引きや金魚すくい等、遊びの屋台が現れた。

短刀三人組がだいぶ興奮状態です。花が飛び散って見えます。そんなキラキラな瞳を向けられては止められません。



「二人以上でなら自由に遊んできて良いですよ」


「ありがとうございます!いきましょう小夜くん五虎くん!」


「ま、まって…!」


「わわっ!」


「あっ、待ってくださいお金…」


「あーあ、二人以上でもあの組み合わせじゃ…」


「ちょっと心配だね。今剣が暴走しそう。主、僕も行ってくるよ」


「すみません、お願いします。では、一時間後にまたここで待ち合わせしましょうか」


「了解。清光、主のこと困らせるなよ」


「困らせるわけないでしょ。早く行きなよ」



今剣たちを追っていく大和守の背に加州があっかんべーをしていたことは秘密にしておきましょう。大和守なら気づいていそうですけど。



「そんじゃ、俺たちも何かするか」


「ですね。薬研と加州は何がしたいですか?」


「いや、俺たちよりも大将だろ?さっきから何もしてねぇじゃねぇか。食い物だって買ってやってばかりだったし」


「皆さんのを少しずつ戴いていましたよ」


「それぞれ一口ずつじゃん。ほら!色々あるんだから主も何かやろうよ」



そう加州に背中を押され、屋台を見回しながら進んでいく。

こういう時に優柔不断だから時間が無くなっていくのですよね。でも沢山ありすぎて迷うんですよ。



「…あ」


「ん?何だ?」



何処に向かうでもなく歩いていたら、一つだけそれが目に止まった。

三段の雛壇に玩具だったり置物だったりと並べられた沢山の品。その下段の端っこに寝そべった白猫のぬいぐるみに、私の目は釘付けになった。



「輪投げだね」


「あの白猫の人形が欲しいんだな」


「いえ、あの…」


「欲しいんだな?」


「……はい」



何ですかその有無を言わせないような瞳は。イエスとしか答えられないじゃないですか。



「主はその辺わかりやすいんだから素直に頷いた方が良いよ」


「そんなにわかるものですか?」


「こういう時の大将って瞳の輝きが違うからな」


「誤魔化せない自分が悔しいです」


「あはは!正直で良いと思うよ。せっかくだしやろうよ。俺も中段の髪結セット欲しいし」


「じゃあ…」



屋台のおじさんに私と加州それぞれ三百円を支払って輪を三つずつ受け取った。品物の前に棒が立っていて、それに掛かれば商品ゲットということらしい。

段までの距離は2mくらい。下段でもそう簡単には成功しなさそうだ。



「…………」



じっと集中して狙いを定め、少し緩めに輪を投げる。と、カツンという音と共にそれは綺麗に棒に引っ掛かった。



「へぇ、上手いな大将」


「欲望の勝利です」


「そこは実力って言わないのな」


「はいよ、お嬢ちゃんおめでとう」


「ありがとうございます」



受け取った白猫は両手でぎゅっと抱けるサイズだ。思ったより滑らかな肌触りで、糸目でフニャッと笑っていて…癒しです。



「嬉しそうだな」


「可愛いです、とても」


「シロみたいでか?」


「はい。あの子へのお土産です」


「本当に妹大好きだな」


「一期が貴方たちを思うのと同じですよ」


「ああ、すっごく納得いった」


「あぁああっ!?そっちじゃないのにぃ!」


「?」


「おしかったなぁ、兄ちゃん」



声を荒げて頭を掻く加州におじさんが苦笑しながら差し出したのは…



「…木彫りの熊」


「渋いな、加州」


「薬研!別にコレ狙ったんじゃないからね!?」



北海道土産でよく見る、ヒグマが鮭をくわえているアレだった。加州が持つと何だか違和感が半端ないです。

どうやら三つ全て投げ終わってしまったらしく、がくんと肩を落とした加州からはどんよりと暗い気が立ち上っている。余程欲しかったようですね。



「すみません、私の残りの輪はまだ使っても宜しいですか?」


「ああ、良いよ。お嬢ちゃんがやるのかい?」


「いいえ。このまま加州に使って頂きます」


「えっ!?」


「薬研、これちょっと持っててください」


「ああ、わかった」



白猫と熊を薬研に託し、私が持っていた輪を加州に渡す。戸惑う彼の背を押して商品の真ん前に立たせた。

こういう指導はしたこと無いですけど、まぁあと二つありますし何とかなるでしょう。



「大丈夫です。言う通りにしてみてください」


「う、うん…」


「髪結セットの棒をよく見て」


「うん…」


「加州の投げる高さだと少し上ですね。距離も下段よりあります。棒に入れることよりも真っ直ぐ投げることに集中して」


「…………」


「強めに投げて」


「…それっ」



加州の手から放れた輪は真っ直ぐに棒に向かっていく。しかし狙いは棒よりも上を通り越し、上段に当たった。

外れたように思うけれど、強く投げられたそれは弾かれたことで手前に落ち、見事に髪結セットの棒に納まった。



「うそ…」


「おみごと」



信じられないと目を丸くする加州の後ろで薬研は感心したように呟いた。



「あっはっはっは!こりゃたまげた!」



盛大に笑うおじさんに商品を受け取ったことで、漸く我に返った加州から喜びのハグを受けたのは言うまでもない。










「凄いね主!言う通りにしたら本当に入った!」

「ああいうのやったことあったのか?」

「いいえ、ただの勘です」

「俺コレ超大事にする!ありがとう主!」

「どういたしまして」


 

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