三人とその近侍たちに最近見る悪夢について事細かに話した。あの祭りの視線を感じた日から見続けていることも、その悪夢のせいか痣が濃くなっていることも全て。
やはり私について聞いていたらしく、瑪瑙さんたちも然程驚いたような表情は見せなかった。
「過去夢ね…。どーりで顔色悪いと思った」
「そんなに顔に出てた?」
「化粧なんて普段しないことしてるからすぐわかったわよ。あたしを騙そうなんて百万年早いわ!」
「え…、そうなの?瑠璃ならちょろいと思ってた」
「"あたしなら"ってどういう意味よ!!」
「まぁまぁ主、落ち着いて」
石切丸さんが宥めると瑠璃はムスッとしながら抹茶ラテを一気に飲み干した。
…あ、それ私の。
………高いの頼もう、瑠璃の奢りで。デザートも。
「痛みはねぇんだな?」
「はい。今となっては逆に不気味なくらいですが」
殴られた痣ばかりが濃くなって、でも当時の筋肉痛のような痛みや倦怠感はない。この痣さえなければ私だって頗る快調なのだけど…、やはり不安は拭えなかった。
「妙な視線…、過去夢…、痣……」
「主、何かわかりそうかい?」
「んーー…」
瑪瑙さんは目を閉じて珈琲を飲みながら考え込む。腕を組んだ翡翠さんも、珍しく口を閉ざしたままの瑠璃も真剣に頭を捻っていた。
…相談して良かったのでしょうね。
悩ませることに申し訳なく思いながらも、こうして私のことを考えてくれている事実が嬉しい。解決にまでは持っていけなくとも、せめてその糸口となれば良い。皆さんにまで同じことが起こらないように…。
「…どうだ、お前ら」
「……もう少し考えたいかな。仮説なら立つけど非現実的というか…。まだ確信が持てない」
「あたしも。ちょっと調べてみるわ」
「動くのは良いが真黒に見つかんねぇように気をつけろよ」
「わかってるって!」
真黒さんに情報が漏れれば全て政府に筒抜けになる恐れがある。彼が上に報告せずともどこから誰が見ているのかわからないのだ。あの視線の持ち主が政府の人間だったとしたら…、その時こそ何が起こるかわからない。
「面倒をお掛けします」
「気にしないで!寧ろこうして相談してくれて俺たちは嬉しいよ」
「また変化あったら言えよ」
「ありがとうございます」
「そうそう!クロの悩みはあたしの悩みなんだからね!」
「え…。そうだったのか。瑪瑙さんと翡翠さんには多大なご迷惑を…」
「ちょっと!"多大"って何よ!!」
「冗談」
「クローーッ!!!」
ギャーギャーと騒ぐ瑠璃に、皆さんは呆れ顔。煩くさせてすみません。
でも、私にとってはこの煩さも心地良い音なのだ。これはつまり、瑠璃が私の言葉の一つ一つを聞いてくれている証拠。
私のたった一つの冗談でもいちいち反応してくれる。
この子じゃなければ私は未だに友達零だったことでしょう。皆さんはこの性格を面倒臭いと思うでしょうけれど、私の唯一無二の親友です。言ってあげませんけどね。
「これ、食べるか?一緒に」
「(一緒に!!)うんっ!!」
さて、デザート頼みますか。
「お待たせ致しました。ご注文は?」
「和栗と紫いもの宇治抹茶パフェを一つと、カフェモカ一つ」
「あと餡蜜一つ!」
「二つも食べんの?」
「シェアすんの!迷ってたでしょ?奢る!」
「…ありがと」
「どういたしまして!」
(デザートシェアするなんて、女の子だねぇ)
(瑠璃も一応女だったんだな)
「クロさん、元気になったようで良かった」
「ああ。甘いもの食べられて嬉しそうだ」
「えっ?嬉しそうなの?全然表情変わってないよ?」
「変わってるぜ。口角がちぃっとだけ上がってて、頬もさっきまでよりほんの少しだけ紅潮してるだろ?」
「え?…え??どこが???」
「……薬研。その驚きの微妙な変化わかるのお前だけだぜ」