…で、なんでここに重春と真黒が?って思っていると、廊下からバタバタと駆けてくる複数の足音が聞こえた。

ガラッと乱暴に開け放たれた扉から現れたのは全身赤に染まった瑪瑙さん。返り血ってやつだね。本人のじゃないみたいだけど凄いな。



「まだいたの!?先輩なんで避難させてないんッスか!!その為に先に行かせたんでしょうが!!」


「いや、これには訳があってだね…!」


「そんなやりとりしてる場合でもねぇだろうが」


「あ、翡翠さん!」



翡翠さんも一緒だったんだ。彼も瑪瑙さんと同じように戦ってきた後のようで、瑪瑙さん程じゃないけど血がついている。

なんか今日は病室が賑やかになるね。本当はダメなんだよ?こういうの。非常事態らしいから今は良いけど。



「よぉ、シロネコ。目覚めたってことは術に勝ったか」


「うん!思いっきり叫んでやった!夢の中で大和くんも一緒に戦ってくれたんだよ!」


「へっ?僕?」


「刀の姿でね、私が大和くんのこと使ったんだ!切れ味抜群だったの!」


「ほぉ、そりゃ良かったな」



翡翠さんは私や審神者たちの術が何だったのかも知っているらしい。過去の夢を見ていたことも、勝ったから私が起きられたことも。

病室に入ってきた翡翠さんは、フッと頬を緩ませると血のついてない手で私の頭を撫でた。真黒より翡翠さんの方がお兄ちゃんっぽくて良いね。取り替えたい。



「シロネコには悪いが、今あまり長話してる余裕は無くてな」


「わかってる、ここも危ないんだね。クロもどこかで戦ってるんでしょ?」


「テメェら姉妹は察しが良くて助かる。クロネコは自分の本丸で戦ってる筈だ」



「君たちはクロちゃんの刀剣男士だね?シロちゃんを守れって命令?」


「うん。瑠璃と石切丸がいるだろうけど屋内戦になってたら大変だからって主が」


「だってさ、石切丸」


「う…」


「ああ!落ち込まないでくだされ石切丸殿!結局屋内戦にはなっていなかったのですから守り刀としての使命は果たされておりますぞ!」



あらま、石切丸さんデリケート?瑠璃もフォローしてあげなさいよね。


兎に角、ここはもう安全じゃなくなってるってことだ。翡翠さんの様子からして説明する手間も省きたいのだろう。



「移動するってことだよね?ならお願いがあるんだけど」


「お願い?」


「なんだ?」


「私をクロのとこまで連れてって』


「えっ?」



どうせ避難するならクロの近くへ。それも理由の一つだけど、もう一つ。もっと重要な理由がある。



「大和くんたちが六人編成で私の護衛に回されたのはそういう理由だよ。私をクロの元まで連れてくること」



起きればっていうのが大前提だろうけどね。眠ったままだったなら医療関係者が近くにいた方が安心するだろうし。

でも私起きたから!そしてクロが本丸で戦っていて六人も寄越したってことは…、これから随分と面白いことするみたいだ。



「クロからは何て命令された?」


「…そういえば、瑠璃さんと石切丸さんに合流して戦えって言われたよね」


「つまり、ここでずっと守ってろってことじゃ無い。私がクロのとこに行っても何の問題も無いでしょ?」


「そりゃそうだがな…」


「だいじょーぶ!もし違ってたら私が怒られるだけだし!でもちゃんと合ってるからさ!連れてって!」



私はここにいちゃいけない。クロのとこに行かないとダメなんだ!

どうしようかと渋っている彼らの気持ちもわかる。主の命令が無いのにそんなことして良いのか。病弱な私を本丸まで運んで良いのかと。

こうしてる間にも時間はどんどん過ぎていく。
それなら…



「…聞いたこと無い?私さ、クロと同じで負けず嫌いなの。それに仕返しも大好きなんだ」


「!そ、そういえば出てくる前に…」


「言ってたね。楽しそうに笑いながら」


「!笑ってたの!?じゃあやっぱりそうだ!連れてって!」



そんなに楽しそうなら見に行かねば!そして私が行くことでクロは…。

何としてでも行く!連れてってくれないなら自分の足で行くんだから!!



「連れてってあげなよ」


「!瑪瑙さん、だけど…」


「大丈夫。俺も援護するし、クロちゃんだって考えなしに君たちをシロちゃんの元に来させたわけじゃない。それは彼女と生活してる君たちがよくわかってるだろう?」


「はぁ、わぁったよ。たく、姉妹揃って強引だな」


「さっすが兼さん!わかってるねぇ!」


「国広の真似すんな!」


「ダメ?国広くん?」


「全然良いですよ!ね、兼さん!」


「許可出すな!!」



兼さん呼び決定!!そんじゃクロのとこに行きますか!

加州くんと大和くんも最後まで心配そうだったけど、とうとう深い溜め息と共に頷いた。



「じゃあ僕がおぶってあげるから、くれぐれも落ちないように気を付けてね?」


「うん、お願いします!」


「俺が先頭行く。五虎退と堀川は安定とシロの近く、和泉守と鳴狐は後ろを守って」


「了解!」


「わ、わかりました!」



私が大和くんに背負われたのを確認するとみんなの顔つきが変わった。闘志を纏い、戦う人の真剣な表情。クロの瞳と同じだ。



「俺は鳥居まで彼らを援護する。翡翠と瑠璃は悪いけど…」


「オッサンとオバハン守れってんだろ?あと真黒。わぁってらぁ」


「ちょっと!あたしたちの親なんだけど!?」


「俺にとってはジジイとババアだ」


「私はついでなの?」


「ついでだ」



わぁ、翡翠さんてば凄い辛辣。参考にしよう。



「じゃ、行くよ。シロちゃんは気分悪くなったら言ってね?」


「はい!みんな、よろしくお願いします!」










今行くからね、クロ。
もうちょっとで自由になれるから!


 

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