「あるじさま!!」


「主!!」



今剣や鶴丸たちの呼ぶ声がしてハッと我に返った。
銃声がした。私に向けられていた銃口から発せられたものだ。

しかし…



「二度も使わせるかよ」


「く、薬研藤四郎っ」


「っ、薬研…」



構えられた拳銃にいち早く気付いた薬研が蘇芳の手を蹴り上げ、銃は空に向かって撃たれた。反動で手放された銃は薬研が素早く回収。蘇芳の首元に刃を突き付け、これで彼は動けない。

お見事です。



「鉛玉は痛ぇからな。これ以上大将に傷付けさせて堪るかよ」


「もっと早くに破壊しておくべきできたね、貴方のことは」


「残念だったな、後の祭りってやつだ。観念してもらおうか」



数ミリでも滑らせれば首の皮膚が破けるだろう。まさに死と隣り合わせの状況。戦闘慣れしてるだけあって薬研は急所をつくのが上手かった。

ここまでやれば普通の人間ならば自分の命惜しさに身を引くところ。命乞いをするなり震えるなりするだろう。

…でも、蘇芳は違った。まだあの余裕な笑みを浮かべている。笑っているのだ、この状況で。



(…まだ、何かある?)



隠しているものがまだあるのか?
そう思い、ふと下ろした私の目があるモノを捉えた。



「!?離れろ薬研っ!!」


「!!」


ジャキンッ!!



間一髪。飛び退いたお陰で薬研は無事だった。
だが先程まで彼がいたその地面から突き出した数多の刃。あのままだったら薬研が蜂の巣になるところだった。笑えない。



「っ、すまねぇ大将。助かった」


「お互い様。それより…」



今度はそこに穴を空けるか。
蘇芳の足元の歪みから我先にと遡行軍が現れる。



「また増えたぁーっ!!」


「…終わらない」



やっと減ってきたのにまた振り出しだ。ガックリと肩を落とす鯰尾に、骨喰も吐く息は重たい。



「ハハッ!まだまだですよ!!」


「もういい加減にしてもらえませんか?いつまで続けるつもりです?」


「決まっているでしょう。貴女がこちら側に来るか、死ぬまでですよ!!」



また戦いが始まる。

湧き出てくる遡行軍に対しこちらは手負いばかり。疲労も蓄積されてこれ以上戦っていれば重傷者が出る。



「…………」



そんなことになるくらいなら…と、チョーカーに触れた。



「!?大将何する気だ!」


「…外す」


「えっ!?」


「ダメだよ主さん!!反動あるんでしょ!?」



反動はある。でも、このまま皆さんが傷ついていくのを見るのは御免だ。

助けられる力があるのに助けないなんて馬鹿馬鹿しいじゃないか。



「…本当は待ちたかったけど」



歪みが増えてこの本丸は不安定だ。時空に飲まれて壊されてもおかしくないくらい、この場は危うい。一刻も早く結界を張らなければ勝てたところで危険は続く。

チョーカーに意識を集中させ、内側から霊力を溢れさせる。



「ん…、…っ」


「なりません!主!!」


「主!やめるんだ!」



長谷部や光忠…、皆さんの声はちゃんと聞こえている。でも、ごめんなさい。今その願いは聞いてあげられない。

反動が怖くて力を制限させたまま全滅するくらいなら、解放させて圧勝する道を選ぶ。



「…ぁ……ッ、…く…っ」



首が痺れるように痛み出し、バチバチと電流が流れてくる。それは次第に大きくなり、チョーカーから黒い電磁波が発せられた。

痛い。

熱い。

苦しい。

だけど…



(っ、私の力は…こんなもんじゃないでしょう?)



息を詰め、奥底に眠る塊を呼び起こすように自分に語りかける。

もっとだ。まだまだ私の力は大きい。まだいける。
あの子を待つという気持ちがまだ抜けてないからか?いつまで眠りこけているつもりだ、いい加減起きろ私の力。



「…ッ、」



ピキッと割れる音がした。

あと少し…



「大将手ぇ離せ!!」


「!」



もうすぐ壊せる。そう確信した時に聞こえた、よく通る薬研の声。皆さんの「止めろ」という言葉ではなかったからか、反応した私は反射的に手を離した。

俯いていた顔を上げ真っ先に飛び込んできたのは、薬研とその手に握られたギラリと光る薬研藤四郎。依代を構え駆けてくる彼が狙っているのは…










それが何なのかを考える間もなく、軽い衝撃が私の首に当たった。


 

ALICE+