冬の夜はやっぱり寒いな。しかも空は曇ってるから余計だ。
大将も吐く息は白く、無意識に袖の中に手を縮こまらせている。一応上着は羽織っているが、寒いものは寒いしどうしようもない。
……どうしようもないが…
「…大将、右手出してくれねぇか」
「?はい」
すっと差し出された手先は握りすぎて白くなっていた。この短時間で随分と握り締めたもんだなとまた苦笑。
小さなその手をそっと握ってそのまま引いて歩き出すと、彼女が驚いたのが繋いだ手から伝わってきた。
「悪いな、大将。両手といきたいとこだが、それじゃ歩けねぇからな」
「…十分です。温かい…」
きゅっと握り返された手。厨までそう遠くはないが、こうして手を繋いでいる間は大将も少しでも俺だけのことを考えてくれるだろう。
「ふふ…」
「!大将?」
「こうしていると薬研のことしか考えられませんね」
薬「!!」
同じことを考えていたのか?
知ってるか?俺も大将と同じだということを。俺が欲しいクリスマスプレゼントも"大将が俺を想う時間"だということを。
「あ…」
「ん?…!雪か」
ふと外を見た大将につられて視線を移せば、夜闇に紛れて白い結晶がふわふわと降り注いでいた。
どうりで寒い筈だと見上げた雲は分厚く、そう簡単には止みそうにない。こりゃ明日までに積もりそうだ。
「寒いな。行くか」
「はい。でも…」
「?」
「どうせなら、ゆっくり行きませんか?」
「!」
それは雪を眺めたいからなのか、手を繋いでいるからなのか。大将の心までは読めない。
だが…
「そうだな」
彼女の手が温かくなりどちらからともなく指を絡める形に繋ぎ直された手に、今日くらいは自惚れても良いかと俺も歩幅を狭め、隣にいる彼女のことだけを考えていた。
「メリークリスマス、薬研」
「メリークリスマス、夜雨」