「…へへ」
「?どうしました?」
「ううん。ちょっと思い出してただけ」
あの日のことは、今思い出しても胸の奥がほんわり暖かくなる。辛い思い出にも勝る主との出会いが、俺の闇を照らしてくれたんだ。
薬研が認めたわけがよくわかった。
主は最初に契約を結んだ薬研たちだけじゃなく、俺にも安定にも…慣れ合うつもりはないとか言う大倶利伽羅にも、一日一回は必ず声をかけてくれる。
意識してやってるのかはわからないけど、そうしてもらえるだけでも″愛されてる″と感じる俺は単純なのかな?
「?」
「なんでもないよ!ほら、早く続き塗って塗って!」
辛い過去があるからか、前に比べると「俺だけを愛して」っていう独占欲は無くなった。
俺たちは刀なんだから、愛してほしいのは皆同じ。もちろん俺だけを見てくれたら嬉しいけど、そのせいで他の誰かが蔑ろにされるのは嫌だ。主はそんなことしないけどね!
そして″愛情″にも色んな種類があるってわかった。
俺が欲しい愛情は″大切にする心″。
だからこうして指の一本一本に綺麗に爪紅を塗ってくれる主には、とても大切にしてもらえてるって実感してるんだ。
他の連中はどうだか知らないけど。
「…主」
「はい?」
一度は努力することを諦めた俺だけど
また頑張るからさ
強くなって、俺も主を守るから
だから…
可愛くしているから、大事にしてね