「"明日の朝、薬研が昨夜の真相を知りたがっていたら、宗三が見たことを赤裸々に語ってあげてください"とお願いされました」
「なんで赤裸々!?」
「しーっ、主が起きてしまいますよ」
最後に頼まれたお願いまで語り終えると薬研の顔は真っ赤に染まっていました。本当に記憶飛んでるんですね。
僕もまさかこんなことお願いされるなんて思いもしませんでしたよ。恐らく、僕が妬みを言いやすいように…なんて変な思考を巡らせたんでしょう。ただの気紛れかもしれませんけどね。
「まったく、長谷部が最初に潰されて一期さんたちもいなかったから良かったものの、酔って主を襲うとは…」
「う…、すまん…」
「謝罪は主にどうぞ。僕は殆ど見ているだけでしたしね。ま、主は謝罪なんて望んでいないでしょうけど」
「恥ずかしかったですけど、鶴丸が言ったように酔いは心の表れ。薬研が私を求めてくれているのだと知れたから…、たまにはこんなことがあっても良いのかなって。私も薬研が愛しいので」
恥じらいながらも僕に胸中を語ってくれた主もまた、薬研を心の底から愛してやまないのですからね。二人とも天然にそのまま"愛しい"と口にするんですから、嫌味を言う気力も無くなります。
「とりあえず、皆が起きてくる前に主を部屋に運んであげてください。せっかく加州さんたちが一期さんを誤魔化してくれたのに、このままではバレてしまいますよ」
「そうだな。いち兄にバレんのは御免だ」
宗「それと、燭台切さんや兄様たちは貴方には黙っていようと相談していたんです」
「!」
「主に頼まれていなければ、僕だって話すつもりはありませんでした」
だってそうでしょう?話のネタにするにしても愛しい子を辱しめたなんて内容で、しかもそれが主だなんて。血の気が引くような話です。同胞を陥れるようで嫌でしたけど、当の主が嫌がるどころか嬉しそうなのが幸いでしたね。これで薬研が自ら昨夜のことを口に出さなければ波風立つこともなく終わります。
感覚がずれているのか鈍いのか。心に正直というのが彼女の魅力なのでしょうね。
「貸し、ひとつですからね」
「…おう。ありがとな、宗三」
「どういたしまして。今後、お酒はほどほどに」
「ああ、もうヘマしねぇよ」
優しく彼女を抱き上げて出ていく薬研。額に口付けて頬擦りする仕草から、彼女をこの上なく愛しているのだと伝わってきます。以前までの僕ならここで嫌味を言っていたのでしょうけど、二人の幸せを願う気持ちの方が大きいですね。言えません。
…さて、薬研と主は戻りましたし。食事当番もまだ起きてきません。僕は部屋に戻って二度寝するとしましょう。お願い事の件で主からお寝坊も許されましたしね。
清々しい朝日に再び眠気を誘われながら、僕もひとり自室へと戻った。
「「「「「いただきます!」」」」」
「江雪、宗三はどうしたんだ?」
「今日は非番ですからね。まだ眠っています」
「連日内番を頼んでいましたから疲れたのでしょう。寝かせてあげてください」
「そうですか、わかりました。ところで光忠、俺は何故頭にコブが出来ている?」
「(ギクッ)昨夜広間の敷居に躓いて机の角に頭をぶつけたんだよ」
「ふむ…そうか。しかし何故昨夜の記憶がすっぽり抜けているんだ?」
「さ、さぁ?
(主ぃいい!何か別の記憶にすり替えなかったの!?)」
(すみません。頭の中薬研でいっぱいでそれところではありませんでした…)
(…………すまん)