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今日は特別な日。


パリッとした制服を身に纏い、玄関先にある姿見鏡で最終チェックをする。
髪型よし、メイクよし!できる限りの事は全てやった。
高鳴る胸を抑え、春香はスクールバッグを掴み家を出た。


私立希望ヶ峰学園。
様々な分野に秀でた才能を持つ少年少女を迎え入れ、更なる高みへ導いていく事を旨としており、日本中から『超高校級』である生徒を集めている。
入学は完全にスカウトのみで一般的な入試は行っておらず、通常の生徒は入学を希望しても入ることは出来ない。


そんな学校に今日から行けるなんて…!
スカウトが来た時は驚いたが、今では楽しみでしかない。
幼少期から役者として仕事していた春香にとって、『超高校級』と名の付く人達と過ごす高校生活が想像がつかなさすぎてワクワクが止まらなかった。


それだけではない。
ずっと会いたくて仕方がなかった人物も、絶対に入学すると感じていたからだ。
ただただ会いたくてたまらなかった大好きな幼なじみに、今日会えるかもしれない。


「早く会いたいなぁ 和一くん」


春香は足早に希望ヶ峰学園へ向かった。



▼▽▼


学校に着くと、敷地の広さに驚いた。
流石は政府公認の超特権的な学園。規模が違う。
先程のワクワク感が、一気に緊張に変わった。


本来なら入学式に出席をするはずだったのだが、仕事の都合上どう頑張っても入学式に参加することが出来ず、春香のみ数日遅れた入学となった。


「(友達…ちゃんとできるといいけど…)…よし!頑張るぞ!気張ってこー!」


一人気合を入れ、職員室に向かうため歩を進めた。
登校時間のため、ちらほら同じ制服を着た生徒が校舎に向かって歩いていた。
こんなにも大きな学園で、彼に出会えるだろうか。
そう考えていた時、ふと隣を通りすぎた人から目が離せなくなった。


青色のツナギ、ピンクの髪の毛、黒のニット帽。そして、微かに香るオイルの匂い。
春香は思わず、通り過ぎた男のツナギの端をくいっと掴んだ。


「ぎゃああ?!な、なにすんだよ!」


男は驚いた様子で振り返った。
細い眉、三白眼の鋭い目つき。そして、特徴的なギザギザした歯。
過去の記憶とは幾分か違うところが多いが、春香は直感した。


「和一くん…?」


「え…?」


「覚えて…ないかな?」


こちらを見たまま固まってしまった男に、春香は心配そうに声をかけた。


「…春香」


ああ、やっぱり。
会いたくて仕方がなかった幼なじみだった。
春香は溢れそうな涙を必死に堪えながら微笑んだ。


「久しぶり、和一くん。会いたかったよ」



私の最高で最悪な学園生活が今、始まる。


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