何万マイル、夢を追いかけ








 ブティックを出てしばらく歩いていると、チリはピクニックがしたいと口に出した。晩御飯は大衆食堂やレストランではなく、この辺でテーブルを建て、手持ちポケモンとサンドウィッチが食べたいらしい。なまえは大量の額を使わせてしまった負い目があったのでピクニックでは申し訳ないと思ったのだが、チリがそう言うならピクニックにするしかない。もちろんなまえのこだわり抜いたレイアウトのピクニックセットで。

 前に1度スイとピクニックをしたチリのピクニックセットは、アカデミーで配られた初期のセットのままだった。それ故に即座にその場で片付けさせられてしまったのだ。なまえは“かわいい”を一切惜しまないワガママである。チリは親しくなった間柄の友人には世話を焼きたがる性格なので、特に何も思わなかったが。

 ハッコウシティのすぐ隣にある東2番エリアで適当な場所に目星をつけて2人でピクニックセットを建てていく。何度かピクニックをしていると互いに役割ができ、主にチリはテーブルを組み立てクロスを敷く係、なまえはイスを組み立ててサンドウィッチの具材の在庫を確認する係。作るサンドウィッチの種類は全ての準備が終わった後に向かい合って毎回2人でウンウンと悩み、結局は2人の好物であるフルーツを使ったサンドウィッチになるのだ。ちなみに本日もそうだった。なまえはチリの好きな具材は多めに入れてやったし、分ける時はチリの方が多くなるようにした。

「こっちのが多ない? 別に気ぃ使わんで良いのに」
「私よりもチリちゃんの方がよく食べるからいいんだよ」
「そお? あ、これ自分好きやろ? あげる」
「わ、嬉しい、知ってたの?」
「流石にずっと見とったらわかるわ」

 そう言ってなまえのサンドウィッチにイチゴを乗せていく。イチゴのことは普通に好きなチリだが、前にアカデミーの授業後に2人で行ったカフェで、美味しそうにイチゴパフェを頬張っていたなまえを思い出しては与えざるを得ない。チリはスイの瞳が輝く瞬間が大好きなのだ。バトルでも、ファッションについて語るときでも、イチゴを食べる瞬間でも。

「なまえはほんまに可愛ええな」
「へへ、チリちゃんに言われると嬉しい」
「そんなんでバトル強いん反則やわぁ。 たからものさがしではジムチャレンジするんやろ?」
「んん? あぁ〜……」

 たからものさがし、したいけどなぁ。ぽつんと呟いた言葉で、なまえの輝いていた瞳はたちまち曇ってゆく。

「チリちゃんは、ジムチャレンジするの?」
「……? そやけど。」
「いいね。 終わったらお話聞かせてね」
「あ、別行動するってこと? そか、そら寂しなるなぁ」
「いや、うん、うーん、まあ、そうなるね」

 煮え切らない反応をするなまえに、チリは邪険な表情をする。手に持っていたサンドウィッチをきゅっと握り直し、なまえは「ポケモンバトルが好き」だと、極めて静かに、独り言を零すように言った。脈略のない言葉にチリはわけも分からず首を傾げる。付け足すように、チリちゃんは?となまえは問うた。

 ポケモンバトルが好きだから、ポケモンバトルをする仕事に着きたいし、ポケモンバトルで名を馳せたい。チリはそう答えた。将来はチャンピオンになるんもええな、四天王も捨て難いし、ジムリーダーのが挑戦者多いか?そうやって悩むチリに、なまえは影のある微笑みで返す。

「醒めないでね、チリちゃんは」










終焉