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「なあみょうじ、知ってっか?」
わざわざ昼休みにうちのクラスまで出向いた林くんと林田くんが私に耳を貸すように言う。
誰がどう見ても普通の一般生徒である私と、ここいらで有名な暴走族集団・東京卍會のメンバーであるパーペーコンビが絡んでいるのが物珍しいようで、クラスメイトだけではなく廊下を通る生徒までもがチラチラと様子を伺っているらしいことがわかる。客寄せパンダになった気分だ。
「これ、ドラケンから聞いたんだけどよ」
「誰だよ、ドラケン」
「誰にも言うなよ!」
聞いちゃいねえ。
「三ツ谷って、」
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三ツ谷って、私のことが好きらしい
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「あ、なまえ! あそこに三ツ谷居るよ」
「あー……、いるね」
「話しかけてあげなよ、きっと喜ぶよ」
「そんな風に話しかけられても三ツ谷だって嬉しくないでしょ……」
「カーッ! 本妻の余裕ってか!」
「何言ってんのほんとに」
絶対喜ぶと思うけどなあ。とは、クラスメイトの言葉だった。そんな自信どこから湧いてくるんだろうか。
一体全体私の何が良くて三ツ谷は私のことが好きなのかは分からないが、その事実は学年……いや下手したら校内に知れ渡っているらしくて。
パーとペーに余計な情報を教えてもらってからというものの、何故か私が一方的に気まずさを感じてちょっと三ツ谷を避けている状況が続いている。
しかしまあ東京卍會の隊長格だという噂の三ツ谷を堂々と無視することも避けることも出来なくて、小心者な私には気持ち程度に無愛想に対応することしか出来ないのだが。などと考えていると、その三ツ谷本人がクラスメイトとの談笑の輪を抜けたのが見えた。
三ツ谷の向かう先を何となく目で追っていると、バチりと視線が混じり合う。そうして三ツ谷は顔を綻ばせるのだ。あ、これ私に話しかけに来るやつだな。
「朝比奈、今日の委員会なんだけどさ」
「あ……、今日だっけ?」
「ウン、そう。 いつも使ってるトコは職員会議あるから、3階の視聴覚室に変更だってさ」
「ありがとう。放課後だよね?」
「そうそう。……あ、」
そうは言っても、3年間委員会が一緒な私と三ツ谷はどう足掻いても月に一度は顔を合わせる。何の縁だか知らないが3年間同じクラスだった為それなりに仲も良くて、それがもっと私に気まずさを加速させた。
今まで友達だと思ってた人が実は自分のことが好きだって知るの、結構キツくない……?私にはキツかった。だから、三ツ谷からの好意には知らないふりをする。ズルくて結構。これが私の生きる為の術なので。
「……? なに?」
「もしかして、……前髪切った?」
「…………あ〜、よく気付いたね」
自分の席に座る私に対して三ツ谷は向かい合うようにしてしゃがみ、私の机の上で腕を組む。その上に顎をちょんと乗せ、そのまま私を見上げた。
「似合ってる」
「……アリガトウ」
あ、あ、あ、あざと〜〜ッッ!完全に私の席に居座るつもりじゃん〜〜〜!!昼休みくらい解放してくれ〜〜〜!!!!
さっきまで話してたクラスメイトは私を残して他のグループに混じって談笑を始める。多分ネタにされてるよ私たち。アンタが私の事好きなの、クラスのみんな知ってるんだよ。え、いいの?三ツ谷はそれでいいの?
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