私と善逸くんが出会ったのは、結構前で。たしか、竃門くんが顎の骨を痛めてた時期だった気がする。幼少期にカナエさんに拾ってもらってからというもの、中堅隊士として戦いつつ蝶屋敷にて働かせてもらっている私にとって、しのぶさんがかなりピリピリした状態で帰ってきたのは随分と印象深かった。最近では温厚もすっかり板に付いてきたと思っていたけれど、思い違いだったかしら。
私としては、鬼を連れた竃門くんに対して特に何とも思わなかったわけだけど。それでも多分、何も知らずに出会っていたら……真っ先に斬っていた。とは思う。
その時の善逸くんと私と言えば、特段仲が良かった訳ではなくて。禰豆子ちゃんに求婚し、アオイやカナヲにもデレデレしていて。なんだか変な人だなあ、なんて。そんな印象。
話していても、「結婚する?」「かわいいねえ」「ごめん聞いてなかったんだけどもっかい言って!?!?」の3パターンで返されてあまり会話が成立した記憶も無い。それも相まって、逆に苦手な印象が強かったかもしれない。
そんな善逸くんと私は今、恋仲にある訳だけれど。別に特別な何かはなく、話していると、さり気ない言葉で私の心がコトリと落ちてしまっただけ。耳がいい善逸くんにはかなり不利で、あっけなく見つかってしまったわけだけど。トントン拍子に上手くいって、今はお付き合いさせていただいているというわけだ。
善逸くんと言えば、女の子が大好きでだれこれ構わず求婚をしているイメージがあるのではないだろうか?……え?そんなことない?いやいや、嘘つかなくていいですって。私だってそう思ってる。団子屋の看板娘なんかに話しかけられたりすると、ホイホイ着いていきそう。
と、こんなに長い前置きをした所で、私は今、買い出しに屋敷を出ていた。そこでその 団子屋の看板娘 に話しかけられている、わたしの恋仲 我妻善逸 を見てしまったわけです。
ああああああああああ……!!! 絶対に着いてくじゃん〜〜〜……!!!!!
「お兄さん、かっこいいです……!良ければ、空いてる日など教えていただけないですか?」
「あ、……ごめんね。俺、今から可愛い恋人に逢いに行くんだぁ。そこの大きな屋敷に居るんだけどね」
「えっ」
「えっ」
看板娘と声が被った気がした。いや、私は物陰から見てるだけなんだけど。頬をぽりぽり、とかいて見せる善逸くん。その顔はまあ、なんとも惚けていて。
え、もしかして、一途なの?
嘘でしょ?
「……あ! なまえちゃんの音が聞こえる……!」
「アギャ!」
や、やっぱり見つかった……!