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以降 番外編・後日譚です
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かつての戦いで崩壊していたカプセルコーポレーションはもう見る影もなく、何度かリフォームが繰り返されていた。今ではクリーム色とブルーを基調とした元のカプセルコーポレーションへと無事に戻り、ホイポイカプセルのちいこいカプセルハウスで生活していた頃を考えるとかなりの前進である。内装はというとブルマ好みに毎日アップデートされつつあり、最初はシンプルに丁寧な生活を送ろうという話であったはずだが、玄関を入ってすぐのリビングには既に余計な物で溢れている。
某日、穏やかな昼下がり。昨日まで続いていた梅雨がようやくあけた。ジメジメとした空気も一掃され、爽やかな朝日で目が覚めた今日の朝は特段気分が良い。溜まりに溜まっていた洋服を何回にも分けて洗濯を繰り返し、メルはだだっ広いこの家をあっちこっちと忙しなく動き回った。そうして今しがた全て干し終わったところである。一通り家事を終えて一息ついたメルは、トランクスがソファに座りながら本を読んでいる姿を見つめていた。視線に気付いたトランクスはのっそりと顔を上げ、メルを捉えて、パチパチと二度瞬きをした。
「隣、座らないんですか?」
「ふふ、そうね。お言葉に甘えて。」
二人掛けのソファの真ん中に座っていたトランクスは満足気な顔をして少し身を寄せる。空いたスペースにメルが腰掛けた。彼の顔は真剣にページをめくっているものの、まぶたが次第に重くなり、ゆっくりと頭をもたげてはハッとしたように起き上がる。ししおどしのような動作を三回、四回と繰り返した頃。やがてトランクスは自身の眠気に抗えず、うたた寝を始めた。メルとトランクスが寛ぐリビングのソファには、窓からほんのりと日差しが差し込んでいた。トランクスのまつげが頬に影を落とし、無防備にも口元が少し緩んでいる。なんでもない休日。平和だ。メルはその様子を見て、思わず微笑む。
ふと、メルの心の中でとある思いが湧いてきた。普段は照れくさくてなかなかできないこと。でも、彼が眠りこけている今なら……。そっと近づき、トランクスの顔を見つめた。その目を閉じている彼の横顔は、どこか穏やかで、あどけなくて、寝顔がまた優しく見える。メルはキョロキョロと辺りを見回した。ブルマは本日は研究に明け暮れていることはわかっているが、今からしようとしている行為の後ろめたさを思えばそうせざるを得ない。
メルは少し……いやかなり迷って、彼の唇の端に軽くキスを落とした。ほんの一瞬のことだった。目を閉じて、ほんのり温かいキスをして、そっと後ろに下がろうとしたその時。
「―――メルさん」
その声に驚いて、メルの体は一瞬で硬直した。気づかれた――いや、まさかこんなに早く!?
トランクスは、寝ているように見えたはずの彼の目がすでに開いており、イタズラが成功した子供のような笑みを浮かべながら、メルの手を掴み、指を絡めた。彼の力強さに引き寄せられ、メルは思わずトランクスの胸に身を寄せる形になった。
「寝込みを襲うなんて、いい度胸ですね。」
「は……!?」
彼の言葉に、メルは顔を真っ赤に染めた。まさか、こんなに早くバレるなんて…しかも、トランクスの笑顔がどこか楽しげで、心の中でさらに照れくささが広がる。
「え、えっと…その…」
メルは言葉に詰まった。恥ずかしさに、顔を下に向けてしまう。
「ふ、冗談ですよ。でも、そんな大胆なメルさんも好きです。」
トランクスはやさしくメルの髪を撫でながら、くすっと笑った。その言葉に、メルは照れくささがさらに募る。でも、トランクスの優しさに包まれて、安心感が広がっていった。彼の胸に顔をうずめながら、メルは小さくつぶやく。
「眠ったフリだなんて、ひどい。」
「かわいくて、つい。」
トランクスは優しく微笑み、もう一度、メルの髪を撫でながら、彼女を抱き寄せた。
そのまま、二人は静かな時間を過ごした。リビングには、温かな陽射しがふたりを包み込み、何もかもが穏やかな空気で満たされていた。
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