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「喧嘩できるくらいなら、会話ができるなら、どれほど良かったでしょうか」
「……どういうことなの」
「3年ほど前に人造人間からオレを庇ってから、ずっと眠ったままなんです。目を覚ますのは奇跡に近いと医者にも診断されてしまいました。」
「……え?」
「それでも人工的に生かし続けているのは、……完全な俺の、エゴです」
徐々に目を見開いて固まっていくブルマ。好奇心に染められて紅潮していた頬の色は分かりやすく失われていく。しかしそれとは相対に、慰めるようにしてブルマに抱かれる女児がトランクスの顔に向けて手を伸ばした。
その仕草が幼い日のトランクスの髪を梳くメルの仕草とオーバーラップして、おまけに忘れかけていた記憶の古い部分がフラッシュバックする。そんなところまで同じなのかと、トランクスは思わず眉を下げて笑った。悲痛で、薄幸な、今にも泣き出しそうな笑みだった。
短い女児の体躯ではトランクスに届かず、もちもちの白いその手はトランクスに救いあげられる形で触れ合うと、とうとうトランクスは顔を覆って俯き始めたのだ。
「……トランクス、」
守りきれず、今では昏睡状態に陥った彼女が暖かな手で自分に触れ合っている。もうしばらく見ていない真っ赤なその瞳が、今の自身を映し出している。
未来に残してきたメルと今目の前にいるメルは、同じであって別個体であるとわかっているが、この事実だけでどうにもトランクスは参ってしまった。
その姿にどうして不憫に思えたブルマが、仕方がないと言いたげに肩を竦ませながら微笑んで、トランクスに問いかける。
眉尻を下げたその笑みは、もう既に母のものであった。
「ねえ。メルのこと、抱っこしてみる?」
「…………」
「……? トランクス?」
「……………あの、……遠慮しておきます…………」
たっぷりと数泊置いた後、トランクスは居た堪れない、とでも言いたげに目線を逸らす。面食らったようにパチパチと瞬きを繰り返したブルマは、一泊置いてから声をあげて笑った。
あなた、メルにゾッコンじゃないの!
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