白ひげ海賊団との出会い1




※このお話はワンピース連載23話『それならお前も』以降に読む事をお勧めします.白ひげ海賊団との出会いのお話.
(夢主8歳の頃の話になります.)




目が覚めたら顔以外の至る所に包帯が巻かれていて。


「あら!気が付いたのね」


掛けられた声の方に顔を向ければ、そこにはナース服を着た綺麗な女が複数人いるのが分かった。


──── ッ!」

「やめときな。ウチの船医達に手を上げたりしたら許さない」


年の割に小さめな身体をはね上げ、ナース服の女の一人へ飛びかかろうとしたなまえを止めたのは、髪を結い上げた着物姿の人物だった。


「…!! 海軍のッ、」

「海軍じゃない。おれの名前はイゾウで、ここは白ひげ海賊団の船の中だ」


白ひげ海賊団。
その名前は幼いなまえでも耳にしたことがあった。

それは確かカルヴァン達と海を渡っている時。
世界最強の四皇の一人だというエドワード・ニューゲート率いる海賊達。


─── …ならば、逃走と勝算の可能性は限りなく低いかもしれない。

それでもッ、


「私はあそこには戻らない!!絶対にッ!!!!」

「ちょっ、待て!!!」


なまえは全身の痛みも耐え、伸ばされたイゾウの手からも逃れて駆け出した。


「そいつを止めろ!!!!」


かなり大きな船なのだろう。

なまえが飛び出した船室の外には大勢の人達が行き交い、その何人かがイゾウの声に反応して手を伸ばしてきたのだが、なまえは巧みにその腕達をすり抜け────


「ぅあッ!!」

「オイオイ。まだ動ける状態じゃねェだろい」

「離して!! 離してよッ!!!!」


逃走を図ろうとした体はあっけなく一人の男によって捕らえられ、抱え上げられてしまった。

だがそれでもなまえは必死に抵抗を示し、大声で叫ぶ。


「離してって言ってるで…ッゲホッ!!…痛ッ…」

「だから動ける状態じゃねェって言ったんだい!!」


なまえを抱え上げた男…白ひげ海賊団で一番隊隊長を務めるマルコはなまえが吐血したのに気付くと、急いで船医達のいる部屋へと駆け戻った。


「いっ…やだ!! もう治療なんて受けなくていい…死なせて……」

「?! お前、何言って…」

「マルコ。そいつを渡せ」

「オヤジ!!」


掛けられた声にマルコが振り向くと、そこにはこの船の船員達全ての“親”であり、船長でもあるエドワード・ニューゲートの姿があった。


「だ、れ…」

「おれはこの船の船長をやってるエドワード・ニューゲートってんだ。子供(ガキ)がそう軽々しく死にてェなんざ口にするもんじゃねェ」

「…ッ!! ふざけるなッ!!!」


キンッ!!


「!」

「あいつ!! あの傷でまだ動けんのかよい?!」


白ひげの言葉に殺気立ってマルコの腕から飛び出し、素手を一線させるなまえ。

咄嗟に自身の薙刀で防いだ白ひげだったが、響き渡ったその音は到底素手と刀とがぶつかり合ったとは思えないような金属音だった。


「これは───


ガガンッ!!

キンキン!!


手負いで、更には白ひげよりも遥かに小さなその体躯にも関わらず、立て続けに何度も何度も攻撃を繰り出すなまえ。


─── まさかこの娘、自分の手を硬質化させて武器にしてやがんのか…?!!


── ッアァッ!! … うッ…」


思い至ったその考えに目を見開いた白ひげだったが、なまえの悲鳴と体に巻かれた包帯に血が滲み始めているのに気付くと、腕を伸ばして素早く華奢なその体を捕らえた。


「…うぅっ!!」


捕らえられても尚、鋭い眼光で白ひげを睨みつけ、再び反撃の兆しを見せるなまえだったのだが、その指はもう一本たりとも動かせそうになかった。


「マルコ。早急に手当てさせてやれ」

「了解!」

「…っ!! いや…だ!!やめ、ッ……ゲホッ!!」

「それ以上しゃべるんじゃねェよい!!」


更に大量の血を吐き出すなまえを抱え、マルコは駆け出したのだった。


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