前口上
とざい、とーざい。
本日不弁舌なる口上な持って申し上あげ奉りまするは、とある家族の物語に御座りまする。
従いまして、堅苦しい口上では皆々様方も無為無聊に欠伸のひとつも出ましょうと、従いまして、憚りながらわたくしも少々口調を革め奉りまする。
さぁ、隅々の皆々様まで声が届いて御座いましょうか?有難う御座います。
さて、本日語りますはとある家族の物語に御座います。物語は、東京都赤塚区某所、古き昭和の味を残して御座います一軒家で催されます。
そこに住まいますは、どこにでも居るような仲睦まじき家族。家族のため懸命に働く大黒柱・松造と、彼を支え家族の生活を支える主婦・松代、そして彼らの子供たちで御座いました。
どこにでも居るような夫婦の子供たちは、世にも珍しき六つ子兄弟。ともすれば、近隣近所では有名な兄弟で御座いました。加えて昔から溌剌元気な問題児ばかり。なにかをすれば物が壊れ、なにかを言えば角が立つ。しかしながら、兄弟同士助け合い生きて参りました彼らの強い絆は、様々ある各々の欠点を覆い隠し、それぞれ個性なんかが出て参りますと、気づけば周囲に受け入れられ、すくすくと立派な成人、立派なニートに育って参りました。
そんな彼らには、一人の姉が御座います。
名をなまえ。松野家長女であり、父・松造に次いで一家を支える働き頭である彼女の存在は、六つ子の影に隠れ目立ちようも御座いません。しかしながら、彼女は松野家に必要欠くべからざる存在で御座いました。
無論、ニート六人を抱える松野家で御座いますから、その収入の大半を家に納める長女の存在は有難く、加えて彼女の容姿や性格は、真に我が子かと実の両親が疑うほど器量良しの気立て良し。そんな彼女で御座いますから、弟たちからの信頼も厚く、親愛を超えた愛情を向けられることも章章たる話で御座いました。
察しの良い皆様であれば、もうお分かりで御座いましょう。この物語、主役はこの長女に御座います。両親に愛され、弟たちにも愛され慕われた彼女の一生。
松野家長女の愛情悲劇に御座います。