一目惚れ


俺が初めてあいつに会ったのは、宴会の時だった。忘年会という名目で、珍しく十番隊の広間を使わせてもらえることになり、乱菊さんを中心として隊長格の人達が集まって騒いでいた。


「恋次〜早く次のお酒持ってきなさいよぉ!」
「乱菊さん!恋次じゃなく俺が!」
「あら、ありがと〜修兵」

乱菊さんの杯にお酒を注げば、甘えるような声でお礼を言われくらっとする。俺も大分酒が回っているし、いつも以上に気が緩んでしまっていた。

「あれ?そういえば乱菊さん、明日も仕事って言ってませんでしたっけ?」
「いーのよ、うちは隊長も三席も優秀だから!私がいなくたって大丈夫よ〜」
「乱菊さんとこの三席って誰でしたっけ?」
「あら、会ったことなかった?すっごい怖いのよ、仕事の鬼よあれは」
「誰が鬼ですって?」

ふと聞き慣れぬ声がして、顔を向ければ少し不機嫌そうな女性がいて、乱菊さんの傍で片膝をついていた。

「うわっ!!」
「っ、な、何ですか…」

顔を見て、俺は正直に驚いて声をあげてしまった。

「めっっっちゃ可愛い…」

普段なら絶対心のなかで留めておける言葉が、口から出てしまった。そのせいか乱菊さんは愉快そうに腹をかかえて笑い出すし、それに注目した京楽隊長やら恋次やらが寄ってきて、申し訳無くなった。
自分の失態を説明したくないし、その子も恥ずかしいからか言わないし、乱菊さんは爆笑してて喋れないしで、俺の漏らした言葉は他の奴らの耳にまで届くことはなかった。


「乱菊さんも檜佐木副隊長も、お酒はほどほどにしてください。ていうか乱菊さん、今何時だと思ってるんですか?0時過ぎたんで帰りますよ」
「え〜〜いやよぉ、せっかくだしあんたは修兵と仲良くしていけば?あははは」
「乱菊さん!!!」

俺のこと、知ってるのか、と少し嬉しくなってしまう。
きっと彼女が十番隊の怖い三席なんだろう。乱菊さんも本気で怖がる様子はないし、きっとただ厳しいというだけで怖くはない子なのだろう。

「よかったら飲んでいかないか?俺まだ帰らないし、」
「結構です!貴方も副隊長なんだから、明日のためにお帰りになられてはいかがですか?」
「俺明日非番なんだよ」
「そうですか。では、私たちはお先に失礼いたします」
「え〜〜、あと一時間〜〜」
「だめです!!」

彼女は乱菊さんの腕を肩にまわし、半ば引き摺りながら乱菊さんを連れていった。
残された俺は、彼女の残していった僅かな香りにくすぐられながらため息をもらした。

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