ファーストインパクト


今日の私は不幸だった。体育があったのに体操着を寮に忘れてくるし、教科書の代わりに雑誌を持ってきてしまうし、クラスメイトが落とした缶ジュースを踏んで転んでスカートの中を見られたりしてしまうし、午前中だけでも散々な目にあっていた。このまま午後を過ごしてもきっと不幸が重なるのだろうと推測し、私は授業をさぼることに決めた。

「天野どこ行くんだよ」
「誰も居ないとこ!」

教室の壁に立て掛けてあった私のキャンバスを抱え、先生が来る前に教室を出た。スケッチブックでも持っていればこんな馬鹿みたいな大きさのキャンバスを運ばなくても済んだのに、不運な私はスケッチブックまで寮に忘れてきてしまっていた。キャンバスのせいで視界が狭かったから、周りに気をつけながら廊下を歩いていた。はずだった。

「あぁ?てめぇ、どこ見て歩いてやがんだ」

何かにぶつかったと思ったけど、それはどうやら人だったらしい。しかも、柄の悪い男子だった。謝るためにすぐキャンバスを下げて、その男子の顔を見上げてみた。声の通り、怖い顔をしているし、しかもリーゼントだし、制服も着崩しているし、明らかにヤンキーだった。

「ごめんなさい!視界が悪かったの」

怯んだら殺される。そう思って、平気な振りしてびしっと謝った。その男子は驚いたような表情をするだけで、喧嘩を売ってくるわけではなかったから、私はキャンバスを持ち直して、逃げるように早歩きでその場を去ることに成功した。


「ついてない…」

逃げたことによって怒っていたらどうしよう、なんて不安にもなるし、今日は本当についていない。
誰も居ない屋上に着いて一人で絵を描き始めることはできたけど、不良に目を付けられたかもしれないという恐怖により、筆が全然進まなかった。

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