メンチ切られる
例のヤンキー君とぶつかる事件があってから、数日経っても呼び出しを喰らうこともなく、いつも通りの平和な日常を過ごすことができていた。
そして私がヤンキー君のことを忘れて過ごせるようになった頃、また出会ってしまった。
「最近狛枝おにぃがついてる!って言うたびに天野おねぇが不運な目にあってる気がするんだよねー」
「…私もそう思う」
「でしょー。席替えしないと狛枝おにぃに幸運ぜーんぶ吸いとられちゃうんじゃない?左右田おにぃとか罪木で狛枝おにぃ囲ませておかないとね」
日寄子ちゃんと話ながら歩いていたら、向かい側からあのヤンキーの彼と、いかにも品行方正って感じのピシッとした真面目そうな男子が一緒に歩いてきた。
私は何も気にしていない振りして日寄子ちゃんと会話を続けたし、向こうは向こうで会話をしていたから、ただすれ違うだけのはずだった。
「それじゃ左右田くんも蜜柑ちゃんも可哀想じゃないかな」
「だからって天野おねぇが犠牲になることないのに」
「ま、まぁ、犠牲って言うほど不運じゃないからね?忘れ物とかは普通に私のただのミスだし」
すれ違い様、ちらっとヤンキー君のことを見てしまった。そしたら、彼もこっちを見たみたいで、視線が交わった。ぶわっと汗が出てきた感覚があったけど、別に友達でもないわけだから何もできず、そのまま目をそらしてすれ違った。
どこ見てんだゴルァ!とか言われなかっただけマシだと思っておこう。
「でもさ、暴走族に目を付けられるのは不運って言うんじゃない?」
「え、」
「今すれ違った柄の悪い男、ずーーっと天野おねぇのこと見てたよ?一目惚れかな?くすくす」
そう言えば、超高校級の暴走族が入学してきたという話は小耳に挟んだことがある。さっきのあの彼が、その暴走族の総長だったのか。
「い、嫌だなぁ。こんな地味で平凡な私が暴走族に好かれるわけないじゃん」
「最近のついてない天野おねぇなら、充分ありえると思うけどね〜」
日寄子ちゃんは怖いことを言って私を脅してくる。一目惚れなんて、まずあり得ない。私と彼は、ただぶつかっただけの関係だ。この世界は少女漫画でもないし、私は食パンくわえて走っていた訳でもないんだから、惚れられたなんてあり得ない。
「あーあ、可哀想な天野おねぇ」
「やめてよぉ…」
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