噂の女の子
大和田くんを呼び出すために、一年生の教室へと足を運んだ。何組なのかも知らなかったから、たどり着いた教室から順に中を覗いて大和田くんの姿を探した。
「あれ?キミどこのクラスの子?もしかして俺に会いに来てくれちゃった感じ?いやー俺って罪な男だなー!」
教室を覗こうとしたとき、運悪くドアの近くに男子がいて声をかけられてしまった。チャラい男子は好きじゃないけど、左右田くんのように見かけによらないパターンもあるしと思って無視するのはやめてあげた。
「あの、大和田くんってここのクラスだったりする?」
「大和田ぁ?いやいや、キミみたいな清楚で可愛らしい子が会いに来るような大和田くんってどれのことだよ」
ナチュラルに可愛らしいとか言われて照れてしまう。
「…暴走族の大和田くんなんだけど」
「マジで?あんな奴やめて俺にしねぇ?俺の方がキミのこと大事にするし可愛がれると思うよ?」
「やめるも何も、私は別に大和田くんとは何も…」
「えっ、じゃあフリーなんだ?じゃあ俺と…、」
なんだかしつこかったのに、ピタリと喋るのをやめてしまった。何かと思えば彼は私の背後に目を向けて苦笑いを浮かべているし、まさかと思って振り向けば、そこには大和田くんがいた。
「桑田…」
「あはは…もしかしてこの子、例の噂の?あっ、いや睨むなって!彼女が怖がるだろ!」
「うるせぇ。天野先輩もこんなとこまで何の用だよ」
ちょっとイラついているようだけど、普通に名前を呼んでくれてほっとした。というか、例の噂の、って何だろう。私ってば何か噂されてたの?
「大和田くんに会いに来たんだけど、ダメだった?」
「あぁ!?」
声を荒げられてびくっとしてしまう。ダメだったのかな。
「…ごめん、ダメなら帰る」
「いやいや、そうじゃないっしょ。今のは先輩の聞き方が可愛すぎてビックリしただけだって!そーだよな、大和田?」
「うっせぇ!黙ってろ!」
そういう言い方しちゃダメだよ、と言いたくなったけど、桑田くんは怒鳴られてもへらへら笑っていた。大和田くんの友達だからこそ、大和田くんが本気で怒っている訳じゃないと理解できているということだろうか。私だったら怖くて黙ってしまいそうなのに。
「…何か、話でもあんのかよ?」
「う、うん」
私には、どう考えても大和田くんが怒っているようにしか思えない。それでも、あの日の話の続きをしなければならないから、うなづいた。
「場所変えるぞ」
「あ、そうだ、えっと…桑田くん?あの、石丸くんに、大和田くん借りるって、伝えといてもらえないかな」
「うぃーっす」
解っていたことだけど、これから二人でお話だ。告白を受け入れるためのお話ではないから、罪悪感が沸いてくる。友達で居ようなんて残酷なこと、言わない方が楽かもしれない。それでも、大和田くんと向き合わないまま全てが終わるのは寂しいだなんて、私のワガママでしかない。
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