超高校級の絶望
先生を探すため、クラス全員で例の地下室へ突入した。地下通路はとても長く、奥へ進めば進むほど不安に煽られた。こういうときこそ左右田くんと軽口を叩き合って気分を紛らわせたいのに、左右田くんは狛枝くんをおぶっていて大変そうだったから、そうもしていられなかった。
不安に押し潰されそうになりながら地下を進むと、ある一室にたどり着いた。白黒の市松模様の敷き詰められた部屋に、モニターが複数設置されていた。
「先生も江ノ島も居ないな……」
「本当にここであってんのか?」
敵のテリトリーで迷子なんて、やってられない。今すぐ帰りたい。
「……罠だ」
いつの間にか目を覚ましていた狛枝くんが、ぼそりと呟いた。すると全てのモニターが光だし、何かが画面に映し出され、あの日聞いた江ノ島さんの声が聞こえてきた。
「みんなぁ、揃った〜?それじゃあ、始めるよ〜!」
「な、七海さん!?」
モニターには、千秋ちゃんの姿が映し出されていた。千秋ちゃんはここにくる途中で足を挫いたから少し休んでから追い付くと、そう聞いていた。まさか休んでいる間に、江ノ島さんに捕まったのか。
「うぷぷぷ、素晴らしき絶望の開幕を告げる、おしおきターーイム!」
江ノ島さんが笑顔でそう告げると、モニターにはナナミさんのおしおきをかいしします、と赤字で表示されていた。
「希望を打ち砕きたいの!あんたたちの信じる希望を!だって絶望の始まりには、希望の終焉こそが相応しいからね!ほーら、気合いいれて逃げないとぉ!」
私たちの見せられている映像は、現実味が無さすぎた。ゲームのダンジョンのようなところを、千秋ちゃんが歩かされていた。途中で出てくる刃物のトラップや床のトゲなどで、ダンジョンを進むほど千秋ちゃんが怪我を負わされていた。やいやい口を挟む江ノ島は、それを、ゲームのように楽しんでいた。
「あんたが死んだら、その映像がみんなを絶望に変えちゃうのよ?それが嫌なら、走るのよ!」
このままだと、千秋ちゃんが本当に死んでしまう。
「た、助けないと」
「七海はどこに居る!?」
「どこでもいい!とにかく探すぞ!」
助けないといけないのは解っている。でも、体が動かなかった。怖くて動かないとか、それももちろんだけど、そうではなくて、金縛りにでもあったかのように、体の自由を奪われていた。
「か、体が、動きません…」
私だけでなく、他の皆も体が動かないようだった。それだけでなく、画面から目をそらすことすら、できなくなっていた。1人で絶望に立ち向かう千秋ちゃんの姿を見て、何もできない自分の不甲斐なさに、涙が溢れてきた。
「もうやだよぉ、見たくないよ…」
「もうやめてぇ…」
江ノ島に煽られ、傷つきながらも、千秋ちゃんはゴールの扉を見つけだした。ゴールだからって、そこを開ければ本当に終わるのだろうか。千秋ちゃんはただそのゴールを信じ、扉を開けた。しかしそこに待っていたのは希望なんかでは無く、千秋ちゃんの体を貫く無数の槍だった。
「千秋ちゃん…」
「なんて絶望的なんだ…なんておぞましい映像なんだ!ははは!」
「あんたたちもこれで私と同じになれるの!私と同じ、超高校級の絶望になれちゃうんだよー!」
映像を見終わった私たちの頭には、江ノ島の声だけが響き渡っていた。そうか、こんな奴に負けて、私は、絶望に染められるのか。私は何も、力になれなかった。ごめんね、千秋ちゃん。絶望に負けちゃって。ごめんね、私もう、大和田くんに会えないや。
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