先生奪還作戦
左右田くんと一緒に蜜柑ちゃんを探し回ってみたけど、見当たらなかった。さっきまで大和田くんと一緒に居たハイテンションが嘘のように冷めてきて、蜜柑ちゃんの安否が心配になってきた。他の誰かが既に蜜柑ちゃんを見つけているかもしれないと、ひとまず教室に戻ることにした。
「狛枝の野郎、何が罪木を見ただよ」
「もしかして見間違いだったのかな?」
やはり教室にも蜜柑ちゃんは居なくて、誰も彼女を見つけられていなかった。
「みんな!先生が大変なの!力を貸して!」
何の手がかりも無くどうしようかと考えていたら、千秋ちゃんがぐったりした狛枝くんを支えて教室に入ってきた。
先生が大変って何なんだ。詳しく聞いてみれば、地下の隠し部屋に先生と、何やらヤバい女が居るとのことらしい。隙をついて千秋ちゃんと狛枝くんで逃げ出してきたとのことだ。
「んじゃあその派手な女をぶっ飛ばせばいいんだな!」
「フッ、ついに俺様の封印を解くときが来たか」
「ありがとう、みんな…!」
私なんかが力になれるのか知らないけど、先生を、蜜柑ちゃんを、助け出さないと。私たちのこの学園の平穏を、守らないと。
「私たちもご一緒しますぅ!」
「!罪木!」
今度は、ぐったりしたペコちゃんを支えた蜜柑ちゃんが教室に入ってきた。何があったのか、ペコちゃんがそんな弱っているところ、初めて見た。
蜜柑ちゃんとペコちゃんの話を聞いてみたら、ただ不安と絶望が心を侵食してきた。私には、立ち向かうような力が無い。
「先生奪還作戦っすね!」
「江ノ島って奴の奥歯ガタガタ言わせてやろ!」
しかもそのヤバい女というのが、江ノ島盾子という女らしい。最近聞いて覚えた、屋上で絡んできた女だった。あの日出会った江ノ島さんは、ただのギャルで、私の恋を応援するような、普通の女子高生だったのに。
「やめた方がいいよ、確かに皆は素晴らしい才能の持ち主だよ。でも、彼らには敵いっこ無い。彼らは絶望……君たちが立ち向かうなんてただの自殺行為だよ」
「あぁ!?そんなのやってみねぇとわかんねぇだろうが!!」
九頭龍くんはやる気らしいが、私も狛枝くんの意見に賛成だ。超高校級とはいえ、私はただ美術が得意なだけの、他は普通の女子高生だ。ペコちゃんを負かすような相手を、どうしろと言うんだ。
「僕は、皆が心配だから言うんだ。一緒に居た七海さんなら、解ってくれるよね」
「でも、」
「死にたいの?」
「し、死ぬっ!?」
「死ぬとか、言われちゃうと……」
現実味が無さすぎて、混乱する。死ぬとか、事態はそんなにやばいところまできてるの? 私まだ、死にたくない。
「さすが超高校級の皆だよ。才能に溢れるだけじゃなくて、引き際もわきまえてるんだねぇ」
私だけでなく他の皆も、不安に思ったのか狛枝くんに言い返せなくなってしまった。
「ほんと!?みんな、本当にそれでいいの?私たちの先生がピンチなんだよ!?このまま何もしないなんてできないよ!」
そりゃあ私たちの大事な先生だけど。どうにかしてあげたいけど。
「オレは行かねぇなんて言ってねぇぞ?」
「唯吹も行く気満々っす!!」
「や、やっぱり僕も行くよ!」
赤音ちゃん、唯吹ちゃん、花村くんや真昼ちゃん、田中くんまで、みんなして千秋ちゃんの言葉に動かされて行くと宣言し始めた。さすが超高校級の皆だ、なんて狛枝くんのような感想を漏らしそうになった。
「天野、そんな心配そうにすんな」
「へ」
「全員でやりゃあ大丈夫だって」
まだ死にたくなくて勇気の出なかった私の頭を、さりげなく左右田くんが撫でてくれた。少しだけど不安が取り払われて、ほっとした。
「大丈夫だよ、私左右田くんほど弱虫じゃないから」
「てめ、人が元気付けてやってんのに!」
きっと大丈夫。このクラスには赤音ちゃんと弐大くんがいるし、他の皆だって、何もできない訳じゃない。これだけの人数が居れば、どうにかなる。どうにかして先生を助けて、私も助かって、また大和田くんに、会いに行くんだ。
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