この手で殺めて
「全部終わっちゃったね、私たち、ほんとに死んだことにされちゃったんだね」
テレビのニュースでは、絶望的事件のせいで3000人以上が死んだと報道されていた。希望ヶ峰の生徒たちはほとんど死んで、生き残ったのは78期生くらいとのことだった。
「おめぇの彼氏生き残ってんじゃねぇか」
「…私が死んだんだから、一緒に死んでくれればよかったのに」
「そういうのはほんとに死んでから言えよ」
「だって大好きな大和田くんが愛してくれた私はもう居ないんだよ?超高校級の画家なんて、もう死んでるし」
私はもう、大和田くんが褒めてくれたような綺麗な空の絵なんか描けなくなった。私が描けるのは、この汚染された真っ赤な空の絵くらいだ。
「ほんとはね、この事件さえ無ければ、大和田くんとえっちなことして大人の階段のぼるはずだったの。あの時、約束してたのに、盾子ちゃんのせいで、ダメになっちゃった」
「はっ。それは大和田の奴も随分と絶望的だったろうな。好きな女を抱けずに死なれちまってよ」
「…大好きな人のことまで絶望的な気分にさせちゃうなんて、私ってほんと罪な女だね」
大和田くん、ほんとに絶望的だと思ってくれたのかな。会って聞いてみたいけど、私は死んでいるからもう会えやしない。それに、78期生の皆は旧校舎をシェルター化して引きこもったとのことだ。私たちに会う術はない。
「その調子でどんどん絶望に染めていこうぜ」
「私、才能へぼいからこれ以上難しいよ」
「なら俺の手伝いしてくれよ、ついてこい」
左右田くんは私の腕を掴んで立たせ、そのままどこかへと歩きだした。
「私にできることなんか無いよ」
「あんだよ。生き残っちまった愛する男を、更なる絶望に染めていく仕事がな」
意地悪そうに歯を見せて笑ってくる左右田くんは、とても楽しそうだ。
「江ノ島に頼まれてんだ。78期生たちをじわじわ苦しめる仕掛けを作ってくれってな」
「私まだ、大和田くんに関われるの?」
「あぁそうだ。間接的に、だけどな」
会えなくてもいい。喋れなくてもいい。まだ大和田くんに何かできるなら。この手で絶望を与えられるなら。
「嬉しい。私、がんばる」
盾子ちゃんに殺されるくらいなら、私がこの手で、大和田くんを。
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