蒼い雷が落ちる


良牙くんはあれからPちゃんとして天道家に住み着くし、良牙くんとしても、まだ乱馬くんを倒そうとして天道道場へ足を運んでいるみたいだし、なんだか私だけ除け者にされているような気分だった。最初に良牙くんを見つけたのは私なのに、なかなか私に会いには来てくれないのは、寂しかった。
私だって空手とかそういうのができれば混ざれたかもしれないけど、私は普通の運動が得意なだけであって、戦いなんかはできそうにない。

なんだか寂しいだとか考えることも憂鬱で、一人になりたくてあかねたちには先に帰ってもらった。しばらく教室でボーッと過ごしていたのだけど、クラスの子たちに心配されてしまったのでやっぱり私も帰ろうと教室を出た。


「…あの、大丈夫ですか?」

校舎を出て帰ろうとしていたら、木陰に倒れている人の姿を見つけてしまった。誰にも発見されなかったらまずいと思い、近付いて声をかけてみた。
苦悩の表情を浮かべたまま眠っていたのは、なびきちゃんの教室で見たことのある、九能先輩だった。1回会っただけだからうろ覚えだったけど、整った顔と制服を無視したこの袴姿は、あの人以外にいない気がした。

「九能先輩」

しゃがんで肩を少し揺すってみると、九能先輩の眉がぴくりと動く。せめて起きてくれないと安心して帰れないから、そのまま声をかけ続けた。するとゆっくりと瞼が開かれ、その真っ直ぐな瞳と視線が交わった。

「おはようございます。こんなところで寝ていたら風邪引きますよ」
「…今、僕に目覚めのキスをしてくれたのはキミか?」
「…そんなもの誰もしてませんけど」

何を言ってるんだこの人。私の呼び掛けで目を覚ましただけじゃないか。

「そう照れるな。眠る僕が美しくてついしてしまったのだろう?」

九能先輩は不敵な笑みを浮かべながら起き上がるのだが、一瞬苦痛の表情を浮かべて頭をさすった。

「頭痛いんですか?」
「いや、大丈夫だ。それより、目覚めさせてくれた礼をしてやろう」

私は座っていたため後ずさることもできず、九能先輩にガバッと抱き締められた。女の私では振りほどけないくらい強く抱かれ、焦りが出てくる。こんなところでこんなことをしていたら、誰に何を勘違いされるか解らない。しかし九能先輩、いい匂いがする。

「いやいや、離してください!礼じゃなくて九能先輩がこうしたいからしてるだけじゃないですか!?」
「むむ、嬉しくないのか?」
「ないです!」
「キミも素直じゃないな」

頭に頬擦りされているような感覚があり、さすがに私も恥ずかしい。九能先輩ってこういう人だったんだ。

「て、ていうか、九能先輩って、あのおさげの女の子が好きだったんじゃないんですか!?」
「なんだ、嫉妬しているのか?可愛らしい奴め。心配せずともこの九能帯刀、キミもおさげの女も天道あかねもまとめて愛してやろう!」

九能先輩、あかねのことまで好きなんだ?なんか周りの男みーーんなあかねに惚れてて、うわ、悲しい。私もそこそこモテるんじゃない!?とか思ってたのに、あかねといると劣等感が沸いてくる。

「そういえば、キミの名は何と申すのだ?」
「…九能先輩みたいな人には教えません」

テンションの低い声でそう言って動けば、腕の中から解放してもらえた。

「私、九能先輩みたいな人好みじゃないので!愛してもらわなくて結構です!失礼します!」

私にしてはきつめの言い方をして、その場をあとにした。せっかく人が心配して声かけたのに、こんな気分にさせられるだなんて。イケメンに抱き締められてちょっとでも喜んでしまった私が馬鹿みたいだ。

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