貴方の手の温もり
「心音ちゃんに触ったら心読まれちゃうんでしょ?こわーい」
「勝手に読まれそうでやだぁ」
「触らないようにしなきゃ」
勝手に人に個性使ったりしないよ。そう伝えても理解されなかった小学生の頃。本当の友達というものは居なかったと思う。
「心音ちゃん心読めるんだよね?私、じゅんぺーくんのこと好きだから、じゅんぺーくんが誰が好きなのか読んできてよ」
「そんなのダメだよ、勝手に読んだら可哀想だよ」
「いーじゃん別に。個性使ったって言わなきゃばれないよ!」
「でも……」
「協力してくれないの?」
友達だと思っていた女の子はこんな風だし、私の個性を悪用しようとする子がいっぱいいた。
はやく!と言って私の背中を押す彼女の心を読めば、私のことなんて友達だと思ってくれていなかった。
「じゅんぺーくん、おはよ」
「ん?あ、おはよ!」
嫌だと言えない私は彼女の言うとおり、彼の肩を叩いて個性を使った。心の奥底を覗くまでもなく、彼が目の前の私に好意を向けていることが解ってしまった。触られた!嬉しい!好き!という想いが一瞬で私に流れ込んできた。私は挨拶以外何も言えなくなってしまった。
女子の恨みは怖いもので、なんであんたが!と怒鳴られてから、クラスの女子の数名から無視された。無視されるだけならまだしも、触らないでと直接言われたり、すれ違い様にぶつかられたりした。一瞬でも触れれば心は読めるから、ぶつかられたとき読んでみたら、醜い感情が流れてきて嫌になった。たまに机に悪口も書かれたけど、文字に触れれば誰が書き残したものなのかも解ってしまって、余計に自分の個性が嫌になった。
「大神心音です。個性は獣化と、透視能力です。狼に姿変わります。それと、触ると心読めます。読むつもりないですけど、読まれたくない人は私に触らないでください」
人の心を読んで傷付くことが多々あったから、このクソみたいな自己紹介でいつも人と心の壁を作るようにしてきた。そのせいか、そこそこ仲良くなった子達でも、滅多に私に触れることはなかった。寂しかったけど、それでよかった。触れてしまって、心を読まれたと誤解されるくらいなら、寂しさくらい我慢できた。
「複合型とかでなく個性二つもあんのすげーな!後で詳しく教えてくれよ」
高校に入学し、隣の席の男子はにこやかに笑って挨拶をしてくれた。それだけでも印象が良かったのに、彼は私に手を差し出して、握手を求めてきた。
「さっきも前で自己紹介したけど……俺、切島。よろしくな!」
「…いいの?」
「何が?」
「触ったら読めちゃうよ?」
「無闇に個性使わないだろ?てか、読むつもり無いってさっき言ってたし」
そんなこと言ってもらえるなんて思わなかった。嬉しくなって、差し出された切島くんの手をぎゅっと握って握手した。大きくて、固くて、温かかった。
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