離れないで
あれから毎日、切島くんと一緒に登下校をしていた。いい感じじゃんと三奈ちゃんや響香ちゃんに言われて照れ臭くなる。切島くんを一人占めしている気分になれるのが、心地よかった。切島くんの隣に居られることが、嬉しかった。
「席替え…」
先生の思い付きのせいで、席替えをすることになってしまった。クラスの皆は楽しそうだけど、私は憂鬱で仕方がなかった。切島くんが喜んでいたら嫌だから、切島くんの顔が見れなかった。私はそのままくじを引きに行き、手元の数字と黒板に書かれた数字を見合わせた。
「大神どこだった?」
「窓際の先頭…。切島くんは?」
「残念、離れた」
切島くんの番号は後ろの方の席だった。残念だ。というか、切島くんも席が離れて残念って思ってくれるんだ。
名残惜しかったけど席を移動して見れば、隣は爆豪くんだった。ちょっと憂鬱に思ってしまったけど、振り返って後ろの席を確認してみた。
「よぉ大神、よろしくな」
私の真後ろは峰田くんだった。ああもう、今日はついていない。うなづいてから、ついため息をついてしまった。そしたら隣の爆豪くんに睨まれるし、余計に憂鬱になった。
「心音、お昼一緒に食べよ」
「あ、うん!購買で買ってくるから先食べてて」
「中庭で待ってるね」
誘ってくれた響香ちゃんも百ちゃんもお弁当を持っていたから、購買へと急いだ。結構混んでいたけれど、なんとかパンと飲み物を手に入れて、二人の待つ中庭へと駆けた。
「あれ…」
中庭に行く途中、階段の踊り場の方にちらっと赤色が見えて、思わず立ち止まった。切島くん何してるんだろう、と思って近付こうとしたら、女の子も一緒に居ることに気が付いた。
「切島くん、あの、はじめて見たときからずっと好きでした!付き合ってください!」
聞くつもりなんか無かったのに、身を隠してしまった。切島くんの答えが気になって、胸がドキドキとうるさくなった。
「ありがと、すげぇ嬉しい」
心臓が止まるかと思った。
先を越された。切島くんに喜んでもらえるんだったら、私だって切島くんに好きだと伝えたかった。
変な汗が出てきて、これ以上聞いていられなくて、足音を立てないように気を付けて逃げ出した。
「響香ちゃん…!」
「遅いよ…って、どーしたの?顔色悪っ」
私は泣き付くように響香ちゃんに事情を話した。
物理的にも精神的にも切島くんが離れていってしまうようで、辛かった。一人占めしたいくらいなのに、他の女の子に取られるなんてもってのほかだ。
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