滲み出る幸せ



合宿二日目、私たちは個性を伸ばすための特訓をさせられた。はじめは、念力で移動する速度を上げるためのスピードアップを飯田くんと一緒に頑張った。しばらく続けていたら先生に呼ばれ、パワーアップの特訓ついでに轟くんが出しまくった氷を砕いて森に飛ばすように指示された。雑用かと思いきや、優等生の轟くんが氷を出す量がすごすぎて、私も全力でやらないと氷を砕いて移動させるまでできなくて、かなり神経をすり減らした。


「やっとご飯…!」

ご飯の時間は訪れたのだが、二日目からは自分たちで作れと指示された。個性の使いすぎで頭痛がしたけど、空腹の方が耐えられないからカレー作りに挑んだ。意外にも勝己くんもきちんとカレー作りを手伝っていて、見事な手さばきでにんじんを切っていた。途中こちらに気付いた勝己くんと目があったけど、お互いに別の仕事をしていたからそのまま目をそらすことしかできなかった。
ご飯も炊けてカレーもできて、やっと食べられる時間がきた。どこ座ろうなんて思っていたらばっちりと勝己くんと目があった。でもわざわざ隣に行くのはなんだか気が引けて、そのまま避けて、空いていた上鳴くんの隣に腰かけた。

「うぇーい、慧ちゃんお疲れ!」
「上鳴くん顔疲れてるね…」
「うぇ?そう?」

特訓で電気使いすぎたんだろうなぁ。少しだけ顔が間抜けになってる。個性の使いすぎでこうなるなんて、顔がもったいない。
鍋の近かった上鳴くんにカレーをよそってもらっていたら、誰かが左隣に座ってきた。ふと顔を向ければそれは勝己くんで、ギクッとした。

「んだよその面、文句あんのか」
「無いけど」

勝己くんは不機嫌そうにカレーにがっついた。個性特訓のせいか、勝己くんの手は赤くなっていて少し痛そうだった。

「手、大丈夫?」
「平気だわこんぐらい」
「…痛そう。頑張ろうね」

私には、痛みを癒す力も何も無い。勝己くんの手が痛んでいても、個性を伸ばすための痛みだから避けられないし、応援するしかない。

「おめーも調子悪いんだろ。飯食って寝ろ」
「…心配してくれてるんだ?」

頭痛で不調なことに気付いてくれて、更に心配までしてくれているような口ぶりに聞こえる。嬉しくて聞き返してみれば、勝己くんは口の中のカレーを飲み込んでから「心配なんかするわけねぇだろ」と言いはなった。

「爆豪冷てーのな」
「はぁ?バカか、こいつがあの程度の特訓で駄目になるわけねぇだろが。なめてんのか」
「褒め殺しかよ」

勝己くん、私のことそういう風に思ってたんだ。実際、ちょっと頭痛するだけだから駄目になんかならないけど、勝己くんに自信満々で言ってもらえるのは本当に嬉しい。

「褒められたからもう元気出た」
「褒めてねぇわ」
「んふふ」

勝己くんにそのつもりが無くても、私は勝手に褒められたと思っておこう。それだけでこんなにも嬉しくて、合宿の辛さなんか吹き飛んでしまった。

「爆豪見てると彼女欲しくなるよなぁ」
「へ?なんで?」
「なんでって、爆豪と佐伯すげぇ仲良いじゃん。俺も彼女と登下校して一緒にご飯食べて隣でにこにこしてもらいたい」

瀬呂くんはそんなことを言ってため息をついた。

「待った。私たち付き合ってないよ…?」
「は!?そーなの!?上鳴知ってた!?」
「おう」
「まじか、オーラがリア充だからてっきり付き合ってんのかと…」

リア充のオーラって何。瀬呂くん何が見えてるの。

「ごちゃごちゃうっせぇぞ。飯くらい黙って食え!」
「何だよ、怒んなよ」

触れちゃいけない空気が漂ってしまったせいか、瀬呂くんも他の人も、それ以上何も突っ込んでこなかった。
リア充オーラというのはよく解らなかったけど、そんな風に見えていたなんて。素直に、恥ずかしい。私の態度のせいだろうか。私の態度が勝己くんにだけおかしくて、勝己くんを好きなように、見えてしまっているのだろうか。だとしたら、めちゃくちゃ恥ずかしい。無意識にそういう態度をとっていたなら、改めなければならない。

- 18 -

←前次→