好きな人の幸せが一番
「なんか、みんなで集まるの緊張する…」
「そうか?俺めっちゃ楽しみ」
今日は高校の同窓会だった。A組の皆で集まるのも何年ぶりだろうか。みんな元気にしているだろうか。
「俺まじで幸のこと皆に自慢するからな」
「やめてよ恥ずかしい」
「いいじゃん、つーか俺の女って言っとかないと、幸めちゃくちゃ可愛いから他の野郎に手出されないか不安」
「同窓会で会う女子に手出そうなんて考え、あの中じゃ電気しか持ってないって」
「は!?ひでえ、俺もうそんなことしないからな」
他愛の無い話をしながら、約束の居酒屋に到着した。ほんとはもっと高級なとこにするかという案があったのだが、絶対皆騒ぐからということで普通のお店になったのだった。
「おーっ!来た来た!やっぱ二人一緒か!」
「ひゅー!熱いね!」
予約の個室に入れば、早速切島と瀬呂が煽ってきた。初っぱなからそれは恥ずかしい。
「えっ何!?二人付き合ってんの!?」
「は?芦戸知らんかったん?」
「知らないー!幸ちゃん会うの久々だし!てかまじ!?横にいるの上鳴で間違いない!?」
「俺以外誰に見えんだよ!」
私たちは空いている席に隣り合わせで腰かけた。久々に会っていきなりみんな元気だし、あの頃と何も変わっていなかった。喋っていたら他のみんなもどんどん集まってきて、私の正面には轟が座った。
「さーて!皆集まったね!じゃあ今日は〜、上鳴と幸ちゃんのカップル成立にカンパーイ!」
三奈ちゃんの音頭で、乾杯の声と驚愕の声が入り交じりながら乾杯した。
「おめでとう、お前ら付き合ってんのか」
轟も珍しく驚いたのか、すぐに私に聞いてきた。
「うん、びっくりした?」
「まぁな。でも、そうなるかと思ってた。上鳴、昔から薄井のこと好きだったろ」
「はは、それ皆に言われる。私全然気付かなかったけど」
「えっ、皆って誰だよ」
隣で聞いていた電気も、驚いたみたいで口を挟んできた。
「響香と切島に」
「え、俺ってそんな、そんな感じだった?」
「どう見てもそうだったろ」
「でもさ、それ電気自身気付いてなかったんだって。アホだよねー」
「まじか」
「アホ言うなし」
電気の想いを、電気も私も気付かなかったのは本当にアホすぎる。せめてどちらか気付いていればこんな遠回りしなかったのに。
「轟ですら上鳴の恋心解ったの?」
恋バナに反応したらしく、三奈ちゃんがグラスを持って移動してきた。
「薄井のこと見てたら目についたからな」
「その言い方じゃ轟が幸ちゃんのことめっちゃ見てたみたいじゃん!」
「まぁその通りだからな」
「えっ」
「はっ!?」
「ん?」
数秒間、私たちだけ静かになってしまった。当の轟は冷静につまみを食べているし、どういうことだ。
「轟まさかあの頃幸ちゃんのこと…?」
「あぁ、好きだったな」
「えーーっ!!嘘!!聞いた上鳴!?」
「ききき聞いたわ!!!やめろ!!聞きたくねぇ!」
「どしたどした?」
三奈ちゃんが騒ぐから、切島とか他の皆までこっちに注目してきた。爆豪がうっせぇとかキレてるけど、それどころじゃなかった。
「とっ、轟が昔幸ちゃんのこと好きだったって!」
「やめろ、昔の話だ」
「だってあの頃、轟、幸ちゃん、えっ、えっ」
「何だよ?」
恋バナでショートしたのか、三奈ちゃんが慌ただしい。私と轟くんを交互に見てくるし、何を私に言わせたいんだ。
「薄井も轟のこと好きだったよな」
「峰田!!」
核心を突かれて怒ったら、電気も私と声を揃えて怒っていて笑ってしまった。
「そうなのか」
またもや轟は驚いたように私の顔を見てくるし、なんだか逃げ出したい気分だった。
「…まぁ、好きだったよ」
「おっとー!?同窓会で実る恋か!?」
「峰田!!!」
峰田の煽りがひどくて、電気がまた怒鳴っていた。電気ちょっと焦ってるけど、私にもうその気は無いから焦らなくていいのに。
「でも私も昔の話だし。今は電気がいるからね。ね?」
電気の方を見てみれば、電気は情けない顔で私を見つめていた。嫉妬してくれているのがわかって、申し訳ないけど可愛かった。
「心臓に悪い!俺まじで轟にだけは何やっても勝てる気しないから!!やめて!!」
「結果薄井と付き合ってんだからお前の勝ちだろ」
「やった!俺の勝ち!」
「勝ちも何も轟と対決したつもり無いならただの不戦勝じゃねーか」
峰田くんのひがみはいまだ続いているようで、さっきから余計な一言が多い。後で怒っておこう。
「上鳴があれだけ薄井にべったりだったから、俺は何もできなかった。上鳴の勝ちだ」
「おっ、俺に遠慮してたのか!?」
「薄井と喋ったら邪魔してきたろ」
「悪い、自覚無い…」
無意識に私のこと大好きだったのか。本当にアホだ。
「そんなだったら、付き合っとけば良かったな」
「…そうだね」
「だめだめだめだめ!悪い気起こすなよ!?」
轟が口元を緩ませながら意地悪なことを言うからのってみたら、電気はめちゃくちゃ焦ってくれた。
「薄井、上鳴に愛されてんな」
「えっ、は、はい、うん、そう思う」
「幸せそうで良かった」
そう言って頬笑む轟は綺麗で、純粋に嬉しい気持ちと、あと昔だったら死ぬほど目に焼き付けてただろうなと思った。
「と、轟のイケメンスマイル見て落ちんなよ!?」
それでも、私の言動に左右されて、色んな表情を見せてくれる電気が、今は誰よりも好きだった。
「私そんな電気みたいにちょろくないからね」
「俺だってもうちょろくねーからな!?幸一筋だわ!」
「のろけてんじゃねーぞ!」
「ひゅー!」
電気が騒ぐからみんなにいじられるし、気の毒だけど可愛いことを言ってくれるのが嬉しい。
「上鳴、薄井のこと捨てたら俺が回収するからな」
「そんな粗大ごみみたいな扱いしねーわ!てか幸のことまだ狙ってんのか…!?こわ!」
「冗談だ。でも、その時俺も独り身だったら俺が養うから、薄井は安心していいぞ」
「そういうの冗談じゃなくて本音って言うんだよ…!」
轟の冗談がほんとに冗談なのか解らなくて戸惑った。
「…でも、電気に捨てられることも電気を捨てることも無いだろうから、心配しなくていいよ」
言ってて楽しくなってきて笑ってしまえば、轟も安心したように笑ってくれた。二人でにこにこしたせいで電気がまた騒いでいたけれど、幸せだった。今日は皆にいじられ轟にまでからかわれて可哀想だったから、帰ったら私が電気を存分に甘やかして、幸せだって言わせてやろう。
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