貴方のためなら
電気と一緒に住むなんて急に決めたことなのに、電気は快く受け入れてくれて、すぐに引っ越し業者に連絡して、私と電気の休みの日に手配してくれた。荷造りするときも荷ほどきするときも、電気は楽しそうで嬉しそうだった。私と住むことを本当に喜んでくれている感じがして、私も嬉しかった。
「そういえばさ、電気なんでこんな良いマンション住んでんの」
「んー?だって俺そこそこ収入あるから。最初からいつか彼女と住むために広いとこ選んだ」
「…よかったね、無駄にならなくて」
「ほんとな、マジ感謝だわ」
狭いアパートに住んでいた私の荷物は全て一部屋に納めることができてしまった。同級生なのにここまで住居に差があるとは。
「つーかさ、ベッド二つもいらなくね?俺の部屋見たろ?キングサイズの」
「それも未来の彼女のために用意してたんだ?」
「もち。だからさ、一緒に寝ようぜ」
電気は語尾にハートが付きそうな勢いでそう言った。たしかに私たちは付き合っているし、電気のことは好きだしキスもしたし一緒にも住むことになった。でも、まだ電気と寝たことは無かった。それなのに同棲というのも早すぎただろうか。
「いや、あの、真剣な顔で考えられると不安になるんですけど…」
「え?あ、ごめん。電気がいいなら、今日から一緒に寝ようか」
「まじで!?ほんとに!?」
「うん」
うなづいてみれば、電気は私に飛び付いてきた。勢いで少しよろけたけど、電気に強く抱き締められて踏みとどまった。
「…俺さ、付き合ってる彼女と一緒に寝て、手を出さずに居られる自信は無いんだけど、大丈夫?」
熱っぽい声でそう聞かれ、ぞくりとする。大丈夫かと言われれば、多分大丈夫ではない。電気とは一つずつ進んできたつもりだったけど、ここまでくるのにもかなり緊張して死にそうになった。
「…いいよ、電気になら」
少しだけ無理をしてそう答えれば、更にきつく抱き締められた。緊張はするけれど、嫌なわけじゃない。電気となら、何でもしたいし、電気の好きなようにさせてあげたい。そのくらい、私も電気が好きなんだから。
その日の夜、二人でご飯を食べて、並んでテレビを見たりして、いつも通りに過ごしていた。このあと本当に電気と寝るのかな、と漠然と考えていたら、ふいに電気に名前を呼ばれた。
「風呂、先入る?それとも俺と一緒に入る?」
「一緒は嫌」
「えー、残念。じゃあお先どうぞ」
「ん」
ああ、びっくりした。別にお風呂に入るのなんか、住んでる家なら普通のことだ。私、ひどいくらい緊張してしまっている。
いつもより念入りに体を洗って、湯船に浸かって悶々と考えていたら、逆上せそうになった。慌ててお風呂を出ればちょっとだけ目眩がして危なかった。
「電気、出たよ」
「んー…」
電気はテレビから私に顔を向けた。何かおかしいのか、電気は私を凝視した。
「電気?」
「いや…これお泊まりでもなくてさ、同棲じゃん?風呂上がりの姿見るの、同棲してからが初めてって、俺らすげぇ順番おかしいなって思って」
「…今さらじゃん。好きって言うより先に付き合ってたくらいだし」
「それもそうか」
電気はくすくす笑いながら近寄ってきた。
「急いで出るから、大人しく待っててな」
ちゅ、と一瞬だけ唇に不意討ちをくらって赤面する。こんなことに耐えられなければ、このあとの行為にはもっと耐えられないだろうに。
ドライヤーで髪を乾かしながら待っていたら、電気はいつの間にかお風呂から出てきていて、ドライヤーを掴む私の手を抑え、スイッチを切られた。
「お待たせ」
電気は髪を乾かしてもいないし、風呂上がりで頬は上気しているし、いつもと違ってドキッとした。笑顔を向けられ、掴まれたその手もそのまま引っ張られ、気付けば電気の部屋へと連れ込まれて、キングサイズのベッドに座らされた。
「さすが電気、手がはやい…」
「さすがって何だよ。幸相手じゃねーとこんなに焦らねーわ」
早速唇を合わせられ、それもすぐに深いものへと変わっていった。握られたままの手は熱くて汗ばんでくるし、口内を電気に侵され息苦しくなってくる。
「絶対、後悔はさせねぇから」
私の不安が伝わってしまったのか、真剣な顔でそう言われた。やっぱり電気の真剣な顔好きだなぁなんて思っていたらまた口を塞がれ、手探りでパジャマのボタンを順番に外された。
「嫌だったら言って、」
そうは言うくせに、私をベッドに押し倒してから、キスをしながら私の体に触れてきた。嫌じゃないから良いんだけれど、嫌だったとしたらしゃべれないじゃないか。壊れものでも扱うかのように優しく触れてきて、くすぐったくてもどかしい。電気は私から唇を離すと、私を見つめてきた。
「ごめん、俺やっぱ、嫌って言われたとしても止まんないわ」
「…嫌じゃないから、大丈夫だよ。電気の好きにして」
「まじ?…わかった、好きにする」
電気の吐息が熱くて、興奮しているのがわかる。全部受け止めてあげたくて、電気に身を任せた。
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