常闇に射す
今日から林間合宿だ。敵対策で親も私たちも行き先を知らない状態で、バスに乗り込まされた。どこに連れていかれるのかという不安はもちろんあったが、全員で合宿というだけで胸が踊った。
「おめーら早く席着け」
しかし一つ困ったのは、女子の人数が奇数ということだ。お茶子ちゃんと梅雨ちゃんはバスに乗る前からずっと喋っててそのまま二人で座りそうだし、他もたぶん二人ずつになるだろうし、やばい、私余る。
二人がけに一人で座るのだけは避けたくてバスの後ろの方に行こうとしたら、既に梅雨ちゃんと座っていたお茶子ちゃんに声をかけられた。
「あ、あかりちゃん隣誰?私たちも一番後ろ行こうか」
「えっ、あ…や、大丈夫!一番後ろもう三人も入れないし、私適当に座る!ありがとね!」
一番後ろは峰田くんとかがいたけど、そこと変わってもらったり何なりしていたら時間がかかって先生に怒られる気がした。お茶子ちゃんの気遣いはめちゃくちゃ嬉しかったけど断って後部へと進めば、常闇くんの隣がまだ空いていた。
「常闇くん、隣誰かくる?」
「いや、決まっていないが」
「じゃあ私お邪魔してもいい?」
「!?…あぁ、構わん。だが、俺の隣でいいのか?」
「常闇くんがいいなら」
常闇くんはうなづいたから、私は隣に腰かけた。何気に教室でも常闇くんの隣の席だから、いつも通りで私は安心する。せっかくのバス移動なのにいつも通りで、常闇くんからしたら物足りないかもしれないけど。ごめんね。
「ぬぁんで常闇だけ女子の隣なんだよ…!明星俺の隣も空けられるぞ!」
「俺をどかす気かよ」
尾白くんのことを考えない峰田くんに誘われたけど、普通に嫌だし尾白くんに申し訳ない。
「峰田くんの隣は絶対嫌」
「本当に嫌ならその小悪魔みたいな笑顔やめろ!」
「本当に嫌って真顔で言うのはさすがに可哀想かなって…」
「同情するなら隣に来い!」
「絶対に嫌」
つい真顔で言ってしまって、峰田くんはビクッとした。ごめん、今のはわざとじゃなかった。
「私うるさくしちゃったらごめんね」
「構わん」
常闇くん静かだから、周りと馬鹿言い合うのも控えめにしとこう。
バスも発車して、皆の楽しそうな声が車内に響き渡る。私もちょっと喋りたいけど、常闇くん目瞑って瞑想してるし、喋り辛い。黙っていても常闇くんなら苦じゃないから別にいいけど、せっかくだから喋りたいしちょっと物足りない。
「…明星」
「へっ?」
「本当は明星もはしゃぎたいだろう。悪いな」
「えっ、いや…別に、悪くはないよ?常闇くんの隣、落ち着くし」
「…そうか」
目瞑ってた割には隣の私のこともちょっとは気にしてくれてたんだ。なんか嬉しい。
「俺も、明星の隣は落ち着く」
驚いて変な声を出しそうになるのをグッと堪えた。常闇くんそういうこと言えるんだ。なんかドキッとした。隣落ち着くとか先に言い出したのは私だけど、ってことは言われた常闇くんもドキッとしたのか?いやでもそれを言い返すか?いやいやいや。
「そ、それは良かった」
全然良くないけど、平静を装って返事をした。常闇くんは目を瞑ったままだったから私の焦りはバレていないだろうけど、めちゃくちゃ焦った。
さっきまで落ち着いていたのに、なんだか急に常闇くんの隣が落ち着かなくなってしまった。
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