らーぶらーぶな修学旅行


希望ヶ峰学園の入学が決まり、気が付くと私は、私たちは、常夏の島に連れてこられていた。
私と同じく超高校級であろうクラスメイトたちが混乱するなか、これは修学旅行なのだと聞かされた。学園生活が始まる前に修学旅行だなんて、と更に混乱したけど、ここではクラスメイト皆で仲を深めて、力を合わせて課題を達成しろとのことだった。

「それでは修学旅行、楽しんでくだちゃいねー!」

ウサミと名乗った先生はそう告げると姿を消した。
とりあえず、ということで全員自己紹介をし、言われるがままに、課題を造り上げるための材料を探す割り振りをされて私は公園を担当させられた。


「ちくしょー…せっかくの修学旅行だってのになんでこんなこと…」

同じく公園にあてられていたのは、超高校級のメカニックである、そうだ何とかくん。さすがにクラスメイト全員の名前を一度に覚えられなくて、そうだという名字が正しかったかどうかも不確かであった。
彼はぶつぶつと文句を言いながら材料を探しており、見た目のせいもあってか話しかけづらかった。目付きも悪いし派手だし、私が話しかけても相手にしてもらえなさそうだし、ちょっとだけ、怖かった。
そんな風にちらちらとそうだくんを気にしていたら、不意にこっちを見たそうだくんと目が合ってしまった。

「そっちの調子どうだ?何か見つかったか?」

そうだくんは案外普通に話しかけてきて、なんだか拍子抜けしてしまった。

「あ、えと、ちょっとだけ」
「大したもん落ちてねぇよなーここ。俺らハズレ引かされたんじゃね?」

そう言いながら大きくため息をついて、肩のこりをほぐすようにぐるぐると腕を回した。

「なぁ、名前なんだっけ?」
「何の?」
「オメーのだよ」

馬鹿な質問返しをしたと思って恥ずかしくなる。そうだよね、私がみんなの名前を覚えきれなかったんだし、そうだくんだって私の名前を覚えてなくてもおかしくなかった。

「遠野空です…」
「悪ぃな、さっき全員自己紹介してたのに、人数多くて覚えれなくてよ。遠野も実は俺の名前覚えてなかったりして」
「…そうだ、くん」
「げ、覚えてたのか。まじか、ごめん」

よかった、そうだくんで間違いなかったんだ。それにしても、私もかなりうろ覚えだから謝らなくても大丈夫なのに。

「全然、大丈夫。それより、その…これから、よろしくね」
「!そーだな、よろしくな」

笑ったときに見える歯がぎざぎざでちょっと怖かったけど、笑顔自体は可愛くて、そんな怖い人ではないのかな、と少しだけ安心した。



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