きょうらく


「京楽隊長……なんですか、その子供は」
「んー?」

八番隊副隊長の伊勢七緒は、子供と一緒に昼寝をする隊長の京楽に不審の目を向けていた。死覇装を着ているわけでもないその子供は明らかに余所者で、護廷十三隊の部外者なのである。

「可愛いでしょ」
「そうですね。だからと言って勤務時間中に昼寝をしていい理由にはならないはずですが。どこから拐って来たんですか?」
「嫌だなぁ七緒ちゃん。僕が子供を拐うなんて酷いことするわけないじゃない」
「…隠し子、ですか?」
「だったらどうする?」

京楽は楽しそうに笑うが、対して七緒は嫌悪感を露にした表情で、抱えていた書類の束を勢いよく机に叩き付けた。その煩い物音のせいで京楽の抱えていた子供は目を覚まし、辺りを見回した。

「冗談だってば、怒らないでよ」
「私が怒ってるのは隊長が仕事をしないからです!」
「あんまり怒るとこの子が泣いちゃうよ」

七緒が鋭い目付きのまま子供に目を向けると、眠そうに開かれた目と視線が交わる。不覚にも可愛いと思ってしまい表情が和らぐが、気を引き締めて京楽に視線を戻した。

「とにかく、怠けるのは仕事を片付けてからにしてください」
「えー」
「教育上よくないのでその子の前でそういう情けない声を出さないでください!京楽隊長みたいな大人になったらどうするんですか!」
「隊長になれるねぇ」
「死神でもないんだからただのだらしない大人になるだけでしょう!」

ひどいねーと言いながら京楽は子供と戯れ始めるが、その行為がまた七緒を苛立たせた。

「京楽隊長……仕事をサボる道具に子供を使わないでもらえますか?」
「な、七緒ちゃん?顔が怖いよ?」
「誰のせいですかね?」
「七緒ちゃーん!!」

七緒の怒りの鉄槌が落とされるなか、隙を見つけて子供が脱走した。京楽がそのことに気が付き見つけることができるのは、子供の運命を変えてからになるのだった。

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