あいぜん
いつも話に聞いていた護廷十三隊。京楽のおじさんみたいな死神がいっぱいいるところだ。みんな霊力を持っていて、自分だけの刀を持っていて、虚を倒すお仕事をしている。
でもどうやらそれだけがお仕事じゃなくて、それをサボるからおじさんは七緒ちゃんって人に叱られていた。おじさんは隊長だから強くてすごくてかっこいいはずなのに、七緒ちゃんよりも弱いみたいだった。正直言って、がっかりした。
とにかくおじさんのところから離れるために闇雲に走り回っていたら、知らない人にぶつかってしまった。勢いでしりもちをついて痛かったけど、顔をあげたら僕の前には大きな手を差し伸べられていた。
「大丈夫?」
「…うん、平気」
両手でその人の手を持って立ち上がったら、両手とも握られてしまって逃げられなくなってしまった。
「迷子かな?」
「迷ってなんかないもん、逃げてるだけだもん」
「誰から逃げてるんだい?」
「…言わない。知らない人に声かけられても答えちゃダメって言われてるもん」
こんなことしてたらおじさんが僕を探しに来てしまうかもしれない。せっかく来たのに何も面白いものが見れてないのに。
「僕は藍染惣右介。五番隊の隊長なんだけど…って言っても、解らないかな」
「隊長!強い人だ!」
「そうそう、よく知ってるね」
「教えてもらったからね!」
「誰に?」
「それは秘密!」
はじめましての隊長さんは、頭も良さそうで強そうですごそうでかっこよさそうだった。
「でももう自己紹介したから知らない人ではないよね?」
「あれ?ほんとだ…。じゃあお兄さんが、僕のこと見なかったことにしてくれるなら教えてあげる」
「わかった、約束するよ」
隊長さんが約束を破るわけないもんね。ちょっと迷ったけど、教えてあげることにした。
「京楽おじさんに連れてきてもらって、今脱走したとこなの。だから僕、早く逃げないと捕まっちゃうよ」
「へぇ、京楽隊長の。今からどこに行くんだい?」
「おじさんより惣右介より強い死神探してるの」
「ここで一番強い死神さんは京楽隊長の師匠だから、会ったら京楽隊長のところへ帰らされてしまうよ」
おじさんってば一番強い人の教え子か何かだったの?そんな話聞いてない。やっぱりほんとはおじさんも強いのかな。
「他に強い人いないの?」
「僕じゃダメかい?」
「うん、ダメ」
惣右介も強そうだけど、なんかわくわくもどきどきもしないし。もっともっと最強に強い人を見てみたい。
「だったら、ここから北の方へ向かうといい。見るからに強くて怖い人たちがたくさんいる隊舎があるはずさ」
「…北ってどっち?」
「あっちだよ」
惣右介が指差した方を向いてみる。今から強い人に会えると思うとわくわくした。
「わかった、行ってみる。迷子になったらまた来るね」
「迷子になったら僕の居場所も解らないんじゃないかな」
「惣右介の霊圧覚えたから平気だよ」
「へぇ、君は霊力があるのかい」
びっくりされて、まじまじと見られてしまう。なんだかちょっと恥ずかしくて目をそらした。
「それだと今から行くところ、ちょっときついかもね」
「どういう意味?」
「怖い隊長さんの霊圧にあてられるかも。それに、その怖い隊長さんに目を付けられてしまうかもね」
「ふーん、面白そう!僕もう行きたい、離して」
「もし何かあったら、僕を呼んでくれれば助けに行くよ」
「名前呼んだら来てくれる?」
「あぁ。だって、京楽隊長のことは呼べないんだろう?」
そうだった、逃げてる限りは頼れる人いないんだった。でも助けを呼ばなきゃならないほど怖い隊長がいるのかな。本当にそんなのが居るんだったら面白いけど。
「わかったー、じゃあ頼んだよ」
「うん、任せて」
惣右介は優しい笑顔をしながら僕の手を離してくれた。
じゃあね!と手を振って、惣右介が指差した方向へと走り出した。
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