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「お待たせしました。今日もよろしくお願いします」

寮の前に停められていた車に乗り込み挨拶をすれば、運転席からいつもと変わらぬポーカーフェイスが顔を出す。

「今日はお休みの予定でしたのにすみません。よろしくお願いします」
「いえいえ、それはお互い様ですから」

先ほどの悟との話が頭をよぎり、いつもより彼女の顔を注視してしまう。眉ひとつ動かしてはいないが、心なしか声音は申し訳なさそうに聞こえる。

「それでは出しますね」



今回の任務に関する資料を手渡され、念のため一通り目は通しておく。こういった資料も、担当する補助監督がまとめて用意してくれたものだ。休日だというのに、資料まで用意して迎えにきてくれた彼女の気遣いを無駄にはできない。

読み終えた資料を置き、ミラーに映る彼女の目元をぼんやりと眺めた。悟の言うように、彼女の表情からはいつも何も読み取れない。今もこれだけ凝視してみても、綺麗な顔だな、という感想しか出てこない。セットされて流してあった前髪が、片目に僅かにかかっている。走行の揺れによってゆらゆらと揺れる髪をじっと眺めていれば、信号が赤になり、車が止まる。それと同時に、彼女の双眸がミラーを通してこちらを見返していた。

「あの、どうしました?」
「いえ、そういえばこうやって2人は初めてだなと思いまして。いつも悟がいましたから」

頭に浮かんだそれとない話題で誤魔化し、様子を窺えば「確かにそうですね」と同調を返してくれた。