目を逸らされるのは照れてるからじゃないって気づこうね




年が明けて早々、ムウは災難に見舞われた。
朝食をとり終えて一息つく間もなく、シャカは白羊宮の、ムウがいる居住区にやってきた。
わざわざ上の宮から出向かなくとも、会話するくらいなら小宇宙でどうとでもなると言うのに、だ。
せめて朝食後というのが救いなのかもしれないと思うあたり、ムウの中で彼に対する諦めが生まれているのかもしれない。


「それで、今日は何ですか?」


またいつもの話ではないだろうな?
暗に苦情と嫌味を込めての発言だが、きっと目の前の男には伝わっていないだろうし、伝わったところで遠慮するというような性格ではない。
案の上、シャカはよくぞ聞いてくれたとばかりに不遜に微笑んだ。
その笑みでムウは確信する。
ああ、今日も、か……。


「うむ、エナガのことなのだが、何故彼女はあそこまでわたしから目を「それはこの前言ったはずだが?」


シャカが最期まで言い終わるのを待たず、ムウはきっぱり言い切った。


「毎度毎度懲りないようだな、君は。言ったはずだ。視線を逸らされる理由が違う、と」
「恥じる以外に一体何があるというのだ?」


理解できないと本気で首を傾げているシャカに、ムウは心底呆れるしかない。
ある意味流石と言うべきか、いや、そんなことに感心している場合ではなかった。
ここでムウが絶句したままだと、シャカのことだ、勝手に無言は肯定としてとらえるだろう。
けれども、これ以上どう伝えたらいいのやら…。

エナガがシャカと目を合わせないきっかけとなったのは、実を言うとシャカではなくミロとカノンにある。
彼らは何も知らない彼女に、「シャカと目を合わせたら命がないぞ」と、さも事実と言わんばかりに嘘をついた。
もちろんエナガの反応見たさの冗談なのだが、知人を疑わない彼女はあっさり信じてしまった。
とはいえ、いくらエナガでもそれが嘘かどうかくらいいつかは気づく。
誤解が未だに解けない、それどころか拍車をかけたのは、他ならぬシャカ本人。

シャカから目を逸らし続けるエナガに、シャカが怪訝に思わないわけがなく、どういう了見だと彼女に詰め寄った際、予想通りエナガは萎縮してシャカとの距離を空けた。
当然シャカは引いたエナガに近づく。
エナガがまた引く。
その繰り返しで最終的にはエナガが壁際に追いつめられて、泣く泣く理由を吐かされる破目になった。
ここで誤解を解けばいいものを、何を思ったのか、この男、「事実だとしたらどうする」と否定も肯定もしなかったと言う。
それが余計信憑性を高めてしまったらしく、エナガは一層シャカから目を逸らすようになった。

シャカとどう付き合って行けばいいものか、途方に暮れたエナガがムウに泣きついたのは昨夜のこと。
その時に真実を一切合財告げてしまえば良かったのだが、何分エナガはかなり混乱していたので真実を告げたところで気休めぐらいにしか受け取られそうになかったのだ。
今日、エナガが落ち着いたのを確認してから、改めて事情を説明する(ついでに加害者であるミロ、カノン、シャカへの報復も共に練る)つもりだった。
それなのに、この男は――――。


「ムウよ、聞いているのかね?」
「ええ、聞いていますとも。ですから、…ちょっとこちらで待っていてください」


立ち話では埒があかないとムウはシャカを居住区内に招き入れる。
漸く話す気になったと思ったシャカは、疑うことなく中へと入った。
シャカが椅子に座ったのを確認するや、ムウは掛けてあった外套を手に取って座ることなく部屋を後にしようとした。


「待ちたまえ。どこへ行くのだ?」
「君が知りたかった真実を連れて来ます。きっと素敵な土産がもらえますよ」


その後、ムウから全てを知らされたエナガが、今までの報復という思いの丈をこめた平手打ちをシャカ・ミロ・カノンの頬にくらわせることとなる。






(完)
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【投げやりアドバイス5題】
配布元;確かに恋だった


野郎どもにはなげやりで、夢主には優しいムウ様が書きたくて。
でもなげやりだけでは気が治まらないので、報復もするという(笑)

2015/1


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