目覚めたら悪夢
※腐女子(というか女装)ネタ注意。
朝、目覚めたら悪夢など、一体誰が想像しただろう。
柔らかな春の日射しを受けて、エナガは意識を徐々に取り戻しつつあった。
「ん…っ」
微睡む心地良さに、意識は覚めてもなかなか目を開けず、窓から射し込む光から逃げるようにエナガは右に寝返りをうとうとした。
……が、横を向いた拍子に膝に何かが当たる感触を覚え、その違和感にエナガは眉を潜める。
妙だと思うも、目視で確認する気はなく、エナガはそのまま惰眠を貪ろうとした。
「寝起きが悪いのは本当だったのだな」
「!?」
頭上から降ってきたのは、聞こえるはずのない声。
咄嗟に上体だけ正面を向いて見たところ、あり得ない光景にエナガは絶句した。
声から予想したとおりの相手は、エナガの真上からまじまじとエナガを眺めている。
端からみれば、あらぬ誤解を生む構図である。
だが、今のエナガにはそんなことはどうでも良かった。
目の前にいる男の格好に全てを持っていかれてしまったのだから。
「な、な、ミニ、スカ、な、な、ナー、ス?!?!」
「感激で言葉にならないとは……つくづくきみは変わった趣味を持っているのだな」
「変な趣味なのはシャカの方でしょ」
寝起きを襲撃された上、こともあろうに何が悲しくて野郎の女装を見せつけられなければならないのだろうか…。
しかも、偏にこちらの趣向にされてはたまったものではない。
エナガは視線を極力足元に向けるのを避けて、口角をひきつらせたままシャカを見た。
春、だからだろうか…?
いっそ、そういう意味の春なら春で何も身にまとわなければいいのに…。
なんて言えば最後、今のシャカなら躊躇うことなく実行に移してしまいそうで怖い。
裸族はサガだけで十分だ…と言ってしまうとこれはこれで問題があるので、エナガは喉元まででかかった諸々のツッコミを我慢した。
「と、とにかく、人の女装を見て喜ぶ趣味はないから」
「だがきみはふじょしなのだろう?」
「は?」
目が点になる、もしくは、目玉が飛び出るほど驚くというのはまさにこのことだろう。
確かに婦女子でも腐女子でもあるが、シャカの口からその言葉をきくとは夢にも思わなかった。
(待って、婦女子って意味かも……じゃないか。どうみても格好が腐っているし……え、ちょっと待って、隠していたつもりがもろバレだったてか…?それはさそれはそれで痛いんですけど…)
必死で平静を装うも、完全な不意討ちに隠し通せるわけもなく。
「先程から赤くなったり青くなったり、落ち着きがないようだが?」
「そんな格好の人間にだけは言われたくないセリフです。黒幕は誰?」
大方沙織かシオンだろうとふんでいたエナガの予想は、悪い意味で裏切られる。
「知りたければ教えてやろう。カミュだ」
「( Д )゜゜」
想定外過ぎる相手に、エナガはただただ唖然とするばかり。
最早シャカのとんでもな格好など、気にすることなくエナガはシャカに詰めよった。
「な、な、か、カミュ?!本当にカミュ?!」
「二度言うほど大事なことかね?」
「大事とかじやなく、意外なの!」
「そうか。カミュ自身氷河から聞き及んだらしいが」
「それでも意外だけど……」
想定外続きでエナガは、いよいよ脱力した。
会話の内容までは定かではないが、最悪己の趣味が明るみになっていたと覚悟した方がいい。
「穴があったら、入りたい…。もう、嫌。痛い。痛過ぎる」
「何を嘆いているのか知らんが、気にすることもあるまい」
わざわざきみのためにきてやったのだ。
とくと拝むがいい。
続いた言葉に、エナガは最早反論する気力すら奪われた。
もう駄目だ…。駄目過ぎる。
己も、そして、目の前で堂々と己に迫る女装男も。
諦めの境地に漸く達したエナガは、渇いた笑みを浮かべる。
「ふっ、…ふふふっ」
「エナガ?」
「いいよ。もう。分かった。そこまでしてくれたんだから、存分に拝ませてもらいましょーか」
エナガは枕元に置いてある携帯を徐に手に取ると、カメラを起動する。
さあ、思う存分撮ってやるから、後で盛大に後悔すればいい。
いろいろと振り切れたエナガは、画面に映るシャカを見据え、宣戦布告とばかりに不敵な笑みを浮かべた。
(完)
=======
カミュ曰く、「まさか本気でやるとは思わなかった…」。
はい、夢主がお腐れ様設定でギャグです。
カッコいいシャカも好きですが、どこかぶっとんでいる彼も好きです。
2015/4
トップページへ
- 14 -
*前次#
ページ: