それはそれで怖い。





相談相手を間違えたかもしれない。
返って来た解決策に、エナガは己の選択を早くも後悔し始めた。

時刻は午後11時。
あと一時間もすれば日付が変わる。
そんな時間帯にエナガが態々自分の世界から訪れたのは、シャカのいる処女宮。
しかも、寝巻姿で彼のいる居住区に迷わず直行というのだから、傍から見れば何を考えていると注意されてしまうだろう。

思慮に欠ける行為にエナガを駆り立てるのは、偏に恐怖心から。
止せば良いのに恐いもの見たさ、好奇心に負けてエナガが夜中に一人で見たのは、ホラー映画。
さして耐性もないのに恐怖心を植え付けるようなものを寝る前に見たのだ。
結果は言わずもがな。
幸い風呂に入ってから見ただけまだ良かった、と、本人は心底そう思っている。

突然のエナガの奇襲に、流石に当の宮の主も、文字通り目を見開いた。
それはそれでエナガの恐怖を煽ってしまったらしく、「ヒィッ!!?」というシャカからすれば至極苦情を言いたいくらいの悲鳴をエナガはあげた。
何せ独りの恐怖が先行したエナガは、シャカが休んでいる居住区直行だけならず、横になって休む彼の真上に降って現れたのだ。
普通に考えれば奇襲を受けた方が何事だと思うものだろう。

不躾な時間に不躾な方法で現れたエナガに、シャカがとりあえず説教したのは言うまでもない。
説教が終了したのが、日付が変わって深夜、午前1時。
漸く本題に入ったわけだが、その本題にシャカは改めて呆れかえったのは、やはり必至の流れである。

後々恐怖で眠ることができなくなるのなら、態々その時間に見なければ良いものを……。
そっくりそのままエナガに返すと、「ご尤もです」と蚊の鳴くような声が返って来た。

とはいえ、真っ先に己を頼って来たのには、悪い気などしなかった。
だからこそこうして最善の提案をしたのだが、どうやらエナガの気に召さなかったのか、即答されることはなく。


「何故返事を渋るのだね。怖くて一人で眠れないと言ったのはきみだろう?」
「それはそうだけど……」


考えなしに来てしまったとは、今更口が裂けても言えない。


(一緒にいてくれるのは良いけど、……別の意味で怖い)


勿論、シャカが自分にどうのこうのしてくるなど、エナガは思っていない。
そもそも、夜中に女一人で忍び込んでくること自体如何なものか、相手がわたしでなければどうなっていたことか、と散々説教した人間だ。
彼の信条を察するに、前言撤回で何かをするようなことはあるまい。


(まあ…大丈夫だよね?)


とかなんとか言いつつ、実のところ闇夜の恐怖が勝っている今、形だけの心配ではあるが。
ちらりとエナガがシャカを見ると、大丈夫に決まっている、とばかりに頷かれてしまう。

良く分からない自信を見せる目の前の男に、普段ならいろいろと指摘したい気持ちになるものの、今回ばかりは話は別。
気が変わってしまわないうちに好意を受け取ろう。


「よろしくお願いします」
「当然だ」


傍から聞くだけなら、確実に誤解を生む会話を交わし、エナガは晴れて安眠を手に入れた。





(完)

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「恐くて眠れない+添い寝」、ええ、ネタとしては大好物です。
2015/4




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